星の髪飾り

星の髪飾り

2007/06/21
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そりゃあ驚いたことだろうよ。 まして玄関先にカサブランカやタマゴユリの花鉢を

置いた時の反応は滑稽だった。 

離婚後、冠婚葬祭以外、盆、正月さえ世田谷の家に帰る事などなかった。

そもそも花の行く先はどこでもよかった。 会社でもスナックでも美紀のマンションでも。

俺の足が世田谷に向かったのは、「花」に関してうざったい話なしで、さっさと退散して

これるからだ。 現にそうだった。 


 俺は涼しい顔して青梅街道へ車を走らせた。 

美紀から何度か連絡があったが、もうお互いに終わりが近づいていることに気付いている。

ちょっと手を伸ばせば抱けそうな女は若い頃だけで充分。 美紀のように行き着くまでの

プロセスを楽しめる類も、3年も経てば鮮度は落ちる。

駆け引きを楽しんだ気まぐれな関係は、恋に伝統がないと同じ位あっけなく車窓を通り

過ぎる。


 その晩、窓際のハイビスカスは赤みを帯びていた。

バーボンが心地よく循環し、月影に吸い込まるように俺はそのまま目を閉じていたのだろう。

 夜空をスキップする少女がいた。

星から星へ自在に飛んで時々横顔をちらつかせる。 俺はもどかしさに身体を捩る。

「美紀・・・?」

 一度だけその名前を呼んだ。 少女が俺の手をとって夜空に招く。

たぶん夢の中に俺はいる。 

切り取られたスクリーンは湖畔に変わった。 

「多摩湖・・・?」

 馴染みの湖を口にした。 たぶんそうではないことを知りながら・・・・。

「榛名湖だ」 

 俺は確信しながら雨に潤った木々が煌めく中で、少女の背を見つめた。



 やがて白いスカートがヒラヒラ舞うくらいの微風が吹いてきた。 振りむいた少女は

田口 優だった。 

                        photo by kitakitune07さん





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最終更新日  2007/06/21 08:09:03 PM コメント(17) | コメントを書く


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