星の髪飾り

星の髪飾り

2007/07/18
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落とした。 そして浮いたレモンを満足そうに見ていた。 

「いつもこうするんです。 紅茶の色が薄くなるのが不思議で、好き!」

 半ば俺の強引な誘いを受け入れた優は、コーヒーが美味しい店があるからと言って、

高円寺駅に向かう途中のログハウス風のカフェを指定した。 

なのに優は迷うことなく紅茶を頼み、美味しそうに飲んでいる。 

白いTシャツにジーンズ姿。 仕事帰りの「ほんのついで」と言う仕草には、幼稚な拒みと

清楚な焦らしが心地よく混ざっていた。

精神的恋愛のメカニズムは、そんな半端が静かに弾けて域を脱する。  



 吹き抜けの天井ではシーリングファンがまわっていて、ジャズが流れている。

「その傷は? 」

「ああ、指? 薔薇のトゲが・・・・」

 夢と現実で見た白い包帯。 トゲなんてありえないだろう!と思いながら軽く頷いた。

「戸田さん、607号室にはもう入居があった?」

 優は窓辺の水中花に目を移し、話を変えた。

「あのマンションには寝に帰るようなもんだから。 さあ、気配はないね。 もっとも

君がいた頃も気配はなかった」

「時々窓ごしに音楽が聞こえたけど・・・」

「ついでにアルコールの匂いも?」

 優は少し首を傾げて微笑んだ後、レモンの酸味に咽たような咳払いをして横を向いた。

長い髪がさらりと肩に流れると、反対側の耳で星が連なる小さなピアスが光った。

「戸田さん、花の届け先はお仕事関係と恋人ね。 いつも高いお花を買って下さって」

「お陰で花言葉なんて言うのも覚えたよ」 

「知っていると、花が凛と意志を持って語りかけてくるでしょう」

「ああ、そんなふうに感じらるんだね君は。 花の中で生まれて花の香りに包まれて育った? 

そんな気がするよ。 そう言えば君の出身地は?」

 優は大きな瞳で天井を見上げ、人差し指を立てて「あそこ」と真顔で言った。

返事が「空」であれば、「地上から追放されて、時々遊びに来ているの」と言った夢の中

の田口 優ということになる。

それならばと思い、俺は初めて味わう不安定を玩ぶ(もてあそぶ)ように訊いた。

「榛名湖・・・・行った事がある?」

                          photo by
しっぽ2さん





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最終更新日  2007/07/18 04:15:20 PM コメント(11) | コメントを書く


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