星の髪飾り

星の髪飾り

2007/07/23
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 優(ゆう)は瞳を輝かせて俺を見た後、「うーん・・・・」と言って潤った唇を張った。

白い頬に小さな笑窪ができた。 

「遠い昔ね」

「うん」

「学生の頃、一度行ったことがあって。 ボートから降りる時にバランスを崩して湖に

落ちたの」

 優は誰かのスキャンダルを語るように頑な(かたくな)を失って喋りだした。 

その後、肩を上げてクスッ!と笑ったので、俺も追つられて微笑んだ。 

傍らに優がいてコクのある空間が出来上がっていく。

「それで白いスカートがびしょ濡れになって・・・・」

 夢で優が履いていた花びらのような白いスカート。 びしょ濡れになった下半身。 

しっとり濡れた太腿が露骨に浮かんだ。

俺は妄想の出口を見つけようと理性を掻き集めた。

「で、どうして榛名湖なの?」

「ん? ああ、実は・・・」



 僅かに軋むウッドフロア-、灯るランプ、触れる程度のジャズ。 俺はぼんやりと賑わいだ

通りを眺めながら、優の視線を感じていた。 

闇に霧を落とす悪戯な女と、光を浴びた白百合に頬を寄せる女。 

揺り篭は左右に揺れながら数秒の沈黙をつくった。

「榛名湖で君と会った。 夢だと思うけど?」

 優は白いカップの底からレモンを掬いい上げて口に入れた後、涼しげな顔で言った。

「夢でしょう、それ。 次に会う誰かにはどんな湖を口にするのかしら? 戸田さんはモテル

でしょう。 さっきからこの店にやってきた何人の女性があなたを見た事かしら。

ただね、私はもう刺激にも余韻にも見放された女だから」

「地上から追放された?」

「素敵な表現ねえ」


 軽やかに揺さぶられてぞくぞくしながら、時間をかけて俺なりに始末をつけてやる。 

優の声や仕草、漂う感触や匂いを閉じ込めたまま、俺は美紀のマンションへ向かった。

                    photo by kitakitune07さん





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最終更新日  2007/07/23 04:21:26 PM コメント(8) | コメントを書く


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