星の髪飾り

星の髪飾り

2007/08/22
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俺の脳は消化不良でイカれ、澄んだ冬の青空を見ることもできない程の不適合を極めていた。

 もう彼女はどこかへ消えただろう。 

ある晩マンションの扉を開けて俺に微笑み、ある日花に頬を近づけて清楚に佇み、

ある晩夢に現われて俺を誘い、それはとめどなく非凡に満ちた時間の流れだった。



「どうせなら、三人で御一緒しません?」

「私は結構だ!」

 それは俺も同じだ、それ以上に御免こうむると、俺は無言の拒否を投げつけた。

世田谷を出て長い間、存在すら忘れかけていた親父との再会を企てたのは、紛れも

無く優なのだ。

今頃親父は予期せぬ圧力に押しつぶされ、倒れているかもしれない。 それなら

それで俺は一向に構わない。 優の接近で、初老の親父は俺以上に逆上せ上がって

いたわけで、全貌を明らかにした優の満ち足りた瞳も、次第に色褪せ、声の勢いが

失せる頃には抜け殻のようになっていた。 今、何故彼女のことが気にかかるのか・・・

血がそうさせるのか。 俺は「俺」を失ってしまったのかもしれない。



 同席を拒否した俺に、優は飄々と言ってのけた。

「いいじゃない。 だってこの方は、私の父親でもあるんだから」

「悪い冗談を・・・・・」

「誠二さん、私達をよく見て」

 優は言葉を無くした男に、顎をくいっと向けて微笑んだ。憎しみに満ちたその顔は、

優ではなく悪魔だった。

                     photo by kitakitune07さん





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最終更新日  2007/08/22 02:05:40 PM コメント(8) | コメントを書く


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