星の髪飾り

星の髪飾り

2007/10/14
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           シーン 4

映画館を出ると、外はすっかり暗くなっていた。 多希子は不思議な時間の経過に戸惑った。
「わあ、町に電気がいっぱい点いとる」                            「お腹すいたら?美味しい物を食べようね」 
 真沙は多希子の手を引き、裏通りの寿司屋ののれんをくぐった。

 カウンターにちょこんと顎を乗せた多希子に、頭に手ぬぐいを巻いた板前が、
「よっ!お嬢ちゃん」と声をかけた。
 令子の通夜に来てくれた馴染みの寿司屋だった。 
やがて多希子の前に寿司が置かれた。 そして小皿に並んだ海苔巻の行列に、卵があるのを多希子はとても喜んだ。
「おいしい?」

「おすしだに」
「お母さん、お、し、す、好き?」                                
 板前と真沙がにっこり笑った。                     
「おじさん、タッコはおへそで回す輪っかを買って貰うんだに」     
「ああ、フラフープか。 もうちっと大きくならんと、まわせんな」       
 拗ねて口を尖らせる多希子の前に、輪切りにしたバナナが置かれた。

「ただいまー」                        
 茂夫が多希子の元気な声を聞きつけ、茶の間にやってきた。
「チャンバラ観た」
「お母さん孝行したな、タッコは」
 真沙は苦笑いをしながら、水玉のネッカチーフとハンドバックを丸い卓袱台に置いた。

「そうかそうか!タッコはお寿司を食べてきたのか」

 多希子の笑みは、久しぶりに母をひとり占めできた歓びに満ちていた。 そしてオルガンの脇に置かれたフラフープを、柱のダッコちゃんが呆れ顔で見つめていた。                                             

          次回 「最後の夏」





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最終更新日  2007/10/15 08:47:18 AM コメント(16) | コメントを書く


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