星の髪飾り

星の髪飾り

2007/10/29
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 雪が消え去った通りで、子供達が元気に遊ぶ。 世間は不幸の頭上を、雲のように通り過ぎる。                        
多希子の足音に耳を立てたシロが、小屋から出てきて尻尾を振った。  
しばらくして亜由美が泣きながら帰ってきた。 膝が血で滲んでいる。
真沙は亨を背負いながら亜由美の足を拭き、赤チンを塗った。
多希子はオルガンの傍にランドセルを置き、亜由美の泣き顔を見て目をつり上げた。 
「亜由美、あいつ等にいじめられたの?」

 最近母の中に起きている「何か辛いこと」に多希子は気づいていた。 白い冷蔵庫だけが目立つ台所で、時折母親がすすり泣く姿を、柱の影から見ていた。


 いつも亜由美をいじめる子とは、さっきすれ違ったばかりだ。
素手で立ち向かう相手は三人。 多希子はすぐさま家を出て、通学路を走りはじめた。
多希子に気づいた彼等は尻を向け、舌を出して逃げようとした。
「許さんぞ! 亜由美をいじめたな!」
「ばーか! 捕まるもんか」
「弱い者いじめは弱い人がするんだに! 」
 学校帰りの友子が多希子に声を掛けた。      
「タッコちゃー!どうしたの?」

 友子の声が遠くになった頃、多希子はついに彼等の一人を捕まえた。
「何だよ、放せ!」

「あいつ、黒いからだよー。 頭もちりちりで」   
 多希子は力いっぱい少年の腕を掴んだ。 すると少年の唇がみるみる船底のようになった。

「よしな、和男!その子は気の毒な子だでね・・・」
 垣根の脇から少年を呼んだ母親は、能面のような顔で多希子を見た。
 ふたりは垣根の向こうへ消えた。 



「おばさーん! 気の毒なのは亜由美だでね!」
 小石を蹴りながら、人が消えた道で多希子は叫んだ。 


                  photo by kitakitune jijiさん

 次回 「憧憬・はじめての東京」





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最終更新日  2007/10/29 04:54:06 PM コメント(10) | コメントを書く


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