星の髪飾り

星の髪飾り

2007/11/14
XML
カテゴリ: カテゴリ未分類



  奔放に走る主犯の影の味方は冴だった。
「まめ(元気)が一番だに」
 不安の闇に打ちひしがれた日々が、パノラマのように移り変わる。 多希子と暮らしはじめた冴がどんどん元気になる事が、良子は何より嬉しかった。                     

 その夜多希子は、良子にせがんで着せて貰った浴衣を着て縁側にやってきた。 浴衣に描かれた赤い金魚の真ん中で、黄色いたんざくで結んだリボンがひらりと揺れた。             

「星の行列。 蛍の教室。 それで月はひとつ。 お日様もひとつ。 ひとつのものは東京からも見えとる・・・空は繋がっとるでね、おばあちゃん」                      
 濃紺の天に瞬く星は、髪飾りのようだった。 そして朝になると薄紫の山に変わる、空の不思議が多希子はとても好きだった。                         

 冴の寝息を聞きながら、その晩も母を思った。 映画とお寿司とネッカチーフが好きな母。 中庭でフラフープをこっそり回していた母。 『お父さんは遠くに行った・・・』と嘘をついた母。 


 八月に入ったある晩、畳の上には、見たこともない大きい網の家が聳えていた。
「今夜から、この蚊帳(かや)の中で寝るで」
「蚊帳?」                           
「夏はここでみんなで寝るの。 蚊に刺されんように」        
「網のお家だ!勝樹、ここに入って学校ごっごする? 戦争ごっこする?」  
「タッコ、戦争ごっこは止めな」                    


【ねえお父さん。 この年はね、1955年8月6日の第一回原水爆禁止世界大会から7年が経っていた】                                                                                        


              次回 「少女の乗った電車」

 photo by  しば桜さん





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2007/11/14 06:04:21 PM コメント(13) | コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: