星の髪飾り

星の髪飾り

2007/12/12
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以前に何処かで逢った様な、もう長い間互いを知っているような、赤い糸で結ばれていたような、そういって人は感嘆する。 瞳の奥に過去の点火や焦燥を感じたり、たわいもない仕草にまぎれて漂う風情を懐かしく思ったり、そうして強く惹かれ合う】                               

 東京に出て四年目、真沙に運命的な出会いがあった。       
高峯英治は体格の良い、心のまっすぐな九州男児だった。 教育熱心な両親の長男への期待に応えた日々。 圧迫されて息絶える寸前、英冶は九州大学から炭鉱の町、田川へと青春を移し、炭鉱で働き続けた。 やがて高度経済成長真っ只中の東京で小さな事業をはじめていた。                
 福岡生まれの英冶も、一九四五年八月九日、長崎で「あの一瞬」に遭っていた。                                                

真沙は、黒淵の眼鏡の奥で瞳を輝かせて夢を語る英治を見つめた。
「私には叶えたい夢がある」
 大きな肩が真沙の目の前に聳えていた。
「幼稚園を作りたい。 笑顔で帰る園児に手を振って見送ることができたらどんなに幸せか・・・」                          
 核の傘の下で犠牲になり、被爆者手帳を胸のポケットに入れて生きる英治との出会い。            
「信州に多希子という死んだ姉の子がいてね。 私を実母と信じていて、迎えに行くのを待っている。 でも・・・」
「私に遠慮した り、気遣ったりしていないだろうね? 兄弟を引き離してはいけないと思うけれど、どうだろうか?多希子ちゃんを東京へよんで五人で暮らせないかな?」
「叶うならばそうしたい。三人の父親になってくれるのですか?」        
「君こそ・・・私も被爆者。 それは変える事ができない」                                                    

 夜空は濃紺のビロードの布をひろげて、遥か彼方から届く煌めきを地上に降らせた。

【お父さん、私の新しいお父さんも被爆者だった】                        





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最終更新日  2007/12/12 04:46:47 PM コメント(6) | コメントを書く


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