【粗筋】
父親が息子に、会社をリストラされたと告白すると、息子は「あ、そう」
「驚かへんのか」
「僕が会社のトップやったら、まずお父さんをリストラするから、不測の事態やのうで、十分予測できたことや」
退職金を元手にレストランをやりたいと言う。近所で親父さんが亡くなって廃業しただるま食堂を借りて、看板を変えるのは高くつくので、前に「火」の字をつける。
「火だるま食堂……危ないな」
母さんは料理は下手だから、父さんが作る。以前から計画して調理師免はとってある。母さんは米を炊く専門、電気釜だから失敗はない。婆さんに注文を取ってもらうが、注文を間違えるのは間違いないから、親子丼専門店とする。自転車に乗れる爺さんは出前。食材は市場の友達を脅して安く仕入れるので、一杯580円の安い親子丼……ということで、
「お前には試食をしてもらう」
「それならやるわ」
「代金は負けておく」
「金取るんかい」
いよいよ開店すると。いい素材で人気になるが、この日、学生寮から30人前、工場からも120人前の注文が入ったのだ。爺さんが丼を回収して来ないと親子丼を出せない。やっと爺さんが戻ったが、うどん屋の出前の自転車と衝突して全部割ってしまったと言う。「すんまへん。丼ないんで、親子皿やったら」カレーの皿で親子丼を出すことになる。これは面白いという客がテレビ局に知り合いがいるので紹介する。さあ、大変。行列の出来る人気店になってしまう。息子も学校へ行っている場合ではないと、サボって一日手伝い。
「疲れたなあ」
「ビールでも飲むか。焼き鳥作るで」
「もう鳥を見るのもいやや。それよりバイト代上げてもらわな」
「それはちょっと待ってくれ」
「ええやないか。儲かっとんのやろ」
「それが、会計を任せた母さんによると、儲かってないんや」
「何で。行列が出来てんねんで」
「母さんに会計を負かしたんが間違いや」
「何で儲かってないんや」
「母さんの計算が、丼勘定やねん」
【成立】
桂文枝(6)の創作落語。清水健太郎が「失恋レストラン」が大ヒットしていた頃、結婚式で健太郎さんがいたのに歌わない。結婚式で「失恋」はまずいだろうというのだ。歌手なのに歌えない……そんな話を聞いてタイトルが生まれたという。
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