mikusukeの赤石お散歩日記

mikusukeの赤石お散歩日記

2007年01月16日
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上も下も分からない暗闇の中。
ただひたすら何かに引き込まれるように進む。
遠方の光が透き通る身体を突き抜ける。その光が急激の速度を増し、一気に世界を
真っ白に染める。眩い光に視界を奪われたアルテミスの視力が回復した時には
暗闇に包まれた空間も、身を包む光も無く先ほどまでいた遺跡のような場所に降り立っていた。

「ふう、どんな所に飛ばされるかと思ったけど案外普通の場所ね。メタビは知ってる場所なの?」

心の中のメタルビートルに対しアルテミスが話しかけるが返事がない。
そして何時も身体の中心に感じていた不思議な感覚も消えうせていた。

「ちょっと、メタビ悪ふざけはよして」

「・・・いないの?どうせまた突然現れて、憎まれ口を言うのでしょ。知ってるんだから」

暫くの間、アルテミスはその場に留まった。壁にもたれ地面に腰を下ろし山形に畳んだ足を
両方の腕で抱えこんで、痛んだ石畳が並ぶ地面を見つめていた。

_ひょっとして、あの暗闇の中ではぐれてしまったのかな?
_もしそうならメタビを探さなきゃ。

新たな世界に投げ出されたアルテミスにとって、今なすべき事が見つかっただけで不思議と立ち
上がる勇気が沸いてきた。
ここが、何処なのかわからない。しかし古い人工的な建築物であることは明らかだった。
痛んだ石畳を蹴って、ひたすら走った。左手を壁にあて、常に壁に沿って走った。
息が切れるほど走ったが、結局誰にも会わないまま元の場所へと戻ってしまった。
激しい息遣いで、両方の手を膝に当て地面を見つめていると、何処からか人の話し声が聞こえる。


_どっちの方向だ?
_壁の中!確かに壁の中から聞こえる!

どういった構造になっているか理解出来なかったが、確かに壁の向こう側から人の話し声が
聞こえる。
アルテミスは膝についた手と頬を壁に当て、耳に意識を集中した。

試しに何度か拳で壁を叩いてみたが反響もなく、分厚い岩の壁であることは間違いない。
しかし、足音はどんどん近づいてくる。
その時であった、アルテミスが張り付いている壁からなんの前触れもなく人が現れた。
まるで、壁から人が生えてくるように手と足が現れ、ゆっくりと全身が姿を現した。
そして、また一人、二人、三人と人が姿を表す。
しかし、不思議と目の前にいるアルテミスの姿を気に留めるものはいない。
結局、最後には総勢20名程の者がアルテミスの眼前に現れた。
そして、アルテミスはその中の一人を見つけ抑えていた声を発した。

「メタビ!」

目の前の群集の中にメタルビートルはいた。しかし、アルテミスの声に反応を示さない。
そればかりか、誰もアルテミスの声に気づく者はいなかった。
思わずメタルビートルに走りよるアルテミスはあることに気づき、走る足を止めた。
そう、アルテミスが慌てて足を進めた時に群集にぶつかった時であった。
体に来るべき衝撃はなく、そのまま体を重ね素通りしてしまった。
そして、目の前まで迫って初めて気づいたメタルビートルの姿は明らかにアルテミスの知っている
オーラと違っていた。姿は今と変わらない、しかし明らかにアルテミスの知っているオーラの感触
とは違う。

_違う、このオーラは私と同調しているオーラと明らかに違う。
_確かに強いオーラではあるけど・・・
_やはり、ここは私がいた場所とは違う次元の所。きっと過去の世界だと思う。
_だから誰も私に気づかない。そしてメタビも私と知り合う前のメタビなんだ。

アルテミスは不思議と今置かれている状況をすんなりと受け入れた。それはあの部屋の守護者が
自分に課した試練と感じていた。

_私は何も知らない。
_だから、きっと此処で何か知らなきゃいけない事があるんだと思う。

新たな決心をしたアルテミスはその群集の進む方向へと続いていった。



赤石物語
(Blackworld and Redstonestory)

~古都の南風 傭兵の詩~




長く続く地下の廊下、そこを一匹のウサギが疾走する。時に部屋の前で止まり中の様子を伺う。
そしてまた次の扉まで走る。何度目かの部屋の前に来た時、ウサギは暫くの間動きを止めた。
そして、元来た廊下を引き返していった。

「はぁはぁ、あったよ。ここから廊下を出て3番目の部屋の壁に鍵があったわ」

ポン!

メルモはいい終えると変身を解き、人の姿に戻った。

「ふーん、で部屋には何人いたの?」とメイヴィ。

「部屋には二人。特に警戒してる様子もなかったわ」
「他の部屋にも誰もいないし」

「部屋には忍び込めそうか?」とノラロー。

「無理じゃないけど、二人相手では私は勝てない」メルモが悔しそうに答える。

「勝てなくてもいいわ。ここまで戻ってこれる?」とメイヴィ。

「それは大丈夫よ。ウサギはかけっこでは負けないわ」自慢そうにメルモが答えた。

「じゃお願い。ここまで来たら私が何とかするから」メイヴィが得意そうに言う。

「お、おい。男の俺の立場は?俺だってプレイヤーだぜ」ノラローが口を挟む。

「そうね、彼方は他の子達を守ってあげて」

「OKって全然期待されてないじゃん俺」

ノラローは酷く傷ついた顔をしたが、メイヴィに睨まれてそれ以上は何も言わなかった。

それから直ぐに作戦は実行された。そして何もかも子供たちの予想通り事は進んだ。
ウサギを追いかけてきた兵士はプレイヤーでは無く、牢の前に現れたメイヴィの召還獣に腰を
抜かし慌てて逃げた。鍵を手に入れたメルモが牢の鍵を開け中の子供たちから歓喜の声が上がり、
すぐさま廊下は子供たちで溢れ返った。
しかし、そんな喜びの顔がすぐさまに固まった。
ゆっくりと、スローモーションの様に倒れていく子供たち。
一人、また一人と地面に子供たちが倒れていく。その表情は笑ったまま。自分に何が起きたのかも理解できずに。
そして、メイヴィの表情も強張ったまま固まった。
ただ、自分の視界が真っ赤に染まった事だけは理解出来た。
メルモもノラローも目の前で起きた現実を受け入れられず、冷たい廊下に腰を抜かしたように座り込んだ。
その床は真っ赤な色で染められ、腰と足にゆっくりと触れる液体は暖かい感触がした。
魂を抜かれ人形のように立ち尽くすメイヴィ。その真っ赤な視界の中心に黒い人影が二つ立っていた。

「いたずら坊主たちにはお仕置きが必要だな。くくくっ」

「そうね、用の無い奴は始末しろと依頼されたから丁度よかったみたいね」

「まぁついでにさっきの役立たず達も殺っちゃったがまぁいいだろう」

狂喜に満ちた表情の二人の背後には先ほどメイヴィに脅されて逃げた兵士達が怯えた表情のまま
固まって床に転がっていた。

ダッダッ

二人の後ろから新たな戦士が駆けつける。

「間に合わなかったか。ロウ!俺はお前を許さん、覚悟しろ」ガラテアが二人の戦士に切りかかる。

カン!

剣と剣がぶつかり合い、つばぜり合いの格好となり冷たい悪魔の表情をしたロウ・バイオレットと
怒りに満ちた鬼の表情のガラテアの顔が接触するほど近寄る。

「フファファハァ、丁度いい。仕事では無いがお前との決着を付けてやろう」

ロウ・バイオレットが喜びの表情で高らかに笑った。

メイヴィはその二人の戦いを時が止まったかのように見つめていた。



<あとがき>

え~本編をようやくUPしました。
今年の初更新でいきなり血の海を演出してしまった><;
中々本編を更新したくなかった理由がこれだったんです。

でも、書かないことには先に進まないので・・・
まぁ違った展開も書けますが、最初のイメージはここでこの展開だったので
迷いましたが結局最初の構想通りにしました。

進みが遅いですが、今年も懲りずに見てくださいなノシ





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最終更新日  2007年01月16日 22時47分28秒
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