ブログ版 南堀江法律事務所
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裁判員制度導入に向けて、刑事裁判の法廷での被告人の服装として、ネクタイなどをつける案が浮上しているらしい。今朝の毎日の記事から。今、法廷での被告人の姿の大半は、ジャージやスウェットです。拘置所の中では、ひも状のモノは自殺用具や武器に使われるおそれがあるということで持ち込めないことになっていて、ベルトやネクタイを着けることができない。そこでジャージやスウェットが多用されることになり、拘置所から法廷に出るときもその格好で出ることになる。(もちろん、保釈されている場合は自宅から法廷に来るので、スーツやジャケットを着用する人が多い)一方、弁護士や検察官は必ずと言っていいほどスーツ姿で、裁判官は黒色の法服です。被告人だけがジャージ姿だと、だらしなく見えて、一見するといかにも「悪いヤツ」の印象を与える。裁判官はその辺りの事情が分かっているし、専門家だから服装によって判断が違ってくることはないだろうけど、一般国民から参加する裁判員の場合、服装に引きずられて「こいつは悪い」と偏見を持つおそれがある。それで日弁連の申し入れを受けた法務省では、法廷で、「ネクタイが一体化したシャツ」、「ベルトが一体化したズボン」の着用を認める案が有力らしい(一体化してるのは、法廷で取り外して武器にするのを防ぐためでしょう)さらに日弁連は、サンダル履きでなく靴の着用を認めることを求めているとか(サンダル履きなのは逃走ができにくいように、とのことらしい)、女性の場合は化粧することを認めるよう求めているらしい。どんなものでしょうか、と私は個人的に思います。ちょっとやり過ぎの感もなくもない。もちろん、被告人の服装や身なりは、その人が法廷に臨む気持ちを表わす一端であると言えます。しかし、その人を裁くには、服装だけでなく、提出された証拠を踏まえて、犯罪の動機や経緯、さらにはその背景にあるその人の全人格的なところをしっかり見据えた上で判断を下すべきです。これは簡単なことではないと思いますが、現場の裁判官はこれをやっていると思います。ネクタイをしていなくてジャージ姿だとそいつが悪人だという偏見を生む、というのであれば、そんな偏見を持ってしまうような裁判員の資質を問うべきだし、さらには裁判員制度そのものの当否を考え直したほうがいいようにも感じます。また、被告人が、ネクタイは窮屈だからと着用を希望せずにジャージで法廷に出ると罪が重くなるのであれば変だと思うし、また女性の化粧まで認めると、化粧によって自分の外見を美化できない男性は不利になってしまうように思える。裁判員制度の導入を見据えて、「国民にわかりやすいように」「国民に誤解を与えないように」ということをかけ声に、いろんな制度改革がされているようですが、「分かりやすさ」だけでよいのか、刑事裁判に関わることの厳しさ、難しさをこそ、もっと分かってもらうべきではないかと、考えた次第です。
2007/05/22
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