ブログ版 南堀江法律事務所

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Bar UKからのお知ら… うらんかんろさん

2008/09/19
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カテゴリ: 判例、事件
高校での行事(サッカーの試合)中に男性が落雷で大けがをして重度の障害を受けた事件で、高松高裁は高校などに3億円の賠償を命じた(17日)。

まず何より、落雷で両目や両手足に重度の障害を負った男性(当時は高校生、いま28歳)には気の毒としか言いようのない事件ですが、この判決について考察します。

高校側に落雷が予見できたか、その上で避難措置を取るべきだったか、という点が事件の争点だったようですが、1審・2審は、「落雷は予見不可能だった」として原告の請求を退けていたのを、最高裁は「落雷は予見できた」としてこれを破棄し、高裁に審理やり直しを命じた。
そして今回、学校側の過失責任が認められたわけです。

素人的には、「どこかで雷が鳴っていれば誰だって『落ちるかも』と思って怖がるから、当然予見できたはずだ」と思うかも知れませんが、法的責任を認めるためには、抽象的に「落ちるかも」という程度では足りず、具体的にそのことを予見できたと言える必要がある。

かと言って、「魁!男塾」の三面拳月光みたいに「何秒後に雷が落ちる」とまで具体的に予見できる必要はない。

法的な意味での予見可能性とはその中間にあって、「その場に落雷する可能性が相当程度に現実的なものである」、といった状況をいうのでしょう。

しかし、行事の現場で、学校教師にその判断をさせるのは酷であるとも思われます。
落雷を予見できたか否かについて、上記のとおりプロの裁判官でも判断が分かれたくらいですから。



特に、被告が公立の学校とか病院であった場合には、そのような配慮が働きやすいと言われています。多額の賠償を命ぜられても、お金は国や県や市が払うわけですから。

(もちろんそのお金は、もとはと言えば私たちの税金です。しかし、私たちもいつ同様の災難に遭うかも知れないのですから、その災難を私たち全員で広く薄くカバーしてあげようと考えるわけです)

しかし今回の被告(土佐高校)は、どうも「私立」みたいです。
サッカー大会主催者である高槻市体育協会も被告として連帯責任を負っているようですが、「市」そのものでなく「市の協会」にどこまで財政的余裕があるかはよくわかりません。

被害者の救済という意味では意義のある判決であることは間違いないのですが、行事などの場の管理者に対しては厳しい判断を下したわけです。
そしてこれが、現在の最高裁の志向する「弱者救済」のスタンスなのだと思われます。





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Last updated  2008/09/19 04:42:28 PM


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