第6回 Kさんに学ぶ「さよなら」



 たくろう所に入居しているおばあさんKさんのご主人が亡くなられて間もなく四十九日です。今日は少し早い四十九日を東源寺で厳かに行いました。納骨は無縁墓地に納めました。お骨を抱きかかえたKさんは「(ご主人が四十九日間仏の)修行をしたから(お骨が)重くなった」と驚きました。

 Kさんご夫婦には子供さんはいません。ご主人はこの一年間入院生活でした。Kさんは何らかの事情で、長年住みなれた首都圏から生まれ故郷に近い米沢に来ました。
 Kさんご夫婦は米沢に来てからたいへんな毎日だったようです。不動産の紹介で買った家はあちこちが傷んでおり、いつもジメジメして冬はとても寒い家でした。買い物やお医者さんに行くのにも自動車に頼らないと生活できません。どこに行くのにもバスは少なく不便で、Kさんご夫婦は歩く以外になかったといいます。人つき合いも上手でないために、誤解をうけることも度々だったようです。
 そんなとき、あることを確認するためにご夫婦は上京して行きます。暑い夏の日に、不慣れな東京で二人は離ればなれになってしまいました。ご主人もKさんもそれぞれが別な場所で保護されました。東京から帰ってからKさんはたくろう所に住むことにしました。

 あれから一年数ヶ月。とても面倒見がいいKさんは、他のおじいさんやおばあさんにも優しく気配りをしてくれます。特にTさんとは大の仲良しです。そんなときに入院中のご主人が亡くなられました。葬儀中のKさんは意外に落ち着いておられ、たくろう所のみなさんやボランティアの面々に見守られてご主人にお別れをしました。

 風が強い寒い墓地で、Kさんはいつもでも手を合わせてご主人にあらためて「さよなら」をしました。
「いつでもお参りに来てくださいね」とご住職はKさんに優しく声をかけました。
 Kさんにとって今日はひとつの区切りになったようです。

 11月17日記


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