第10回 たくろう所の出来事



 たくろう所には建設会社の社長さんや校長先生がいる。青年相手に仕事を教える校長先生は昼寝も惜しまず働く。運転手の新関さんは辻タクシーか個人タクシーのどちらかである。そういう私は薬屋さんで、いつも便秘の薬を忘れてはおばあちゃんに叱られている。
不倫相手がこの旅館の女将で、女将は子どもが1人いる。2回も不倫現場を目撃したとおじいさんを責めるおばあさん。再婚相手を探すように命じるおじいさん。

 たくろう所のおじいさんやおばあさんは入居者同士や介護ボランティアを自分のイメージや物語の中でいろいろな配役に仕立ててしまう。それは見事なものだ。

 タネあかしは次のとおり。
 建設会社社長はいつも不動産や新築・中古物件のチラシを食い入るようにみているおじいさんをなぜか校長先生はおもいこんでいる。校長先生の正体は世間話を道徳論に代えてしまうの話好きなおじいさんのニックネーム。送迎ボランティアをタクシー運転手とおもいこんでいるおばあさん。病院からおじいさんやおばあさんの薬をまとめて持参する私を薬屋さんとおもいこんでいるおばあさん。たくろう所が旅館であるとおもっているおばあさんは、旦那さんを愛して愛しているが旦那さんは手も握ってくれないことにやきもきしている。洗濯物や下着を整理している女性職員や入所者を浮気相手とおもいちがいしてしまう。なんとか再婚相手を探して、その人に面倒を看てもらう代わりに、財産をその人にあげようとしている。
 それぞれのおもいがたくろう所で現実となっている。タネにはそれなりの理由があるのだった。

 11月17日記


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