第7回 合掌 早坂茂三 さん



ヤフーのトピックスをみてびっくりしました。

早坂茂三氏が死去 田中元首相の元秘書

 故田中角栄元首相の秘書だった政治評論家の早坂茂三(はやさか・しげぞう)氏が20日、肺がんのため東京都内の病院で死去した。73歳。北海道出身。自宅は東京都目黒区平町。葬儀・告別式の日程、喪主などは未定。(共同通信)

昨年11月にご一緒したときにはとてもやさしく諭していただきました。あれが最後になろうとは残念です。
11月16日の日記を再録して早坂さんを偲びます。

合掌

6月21日記

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早坂茂三さんに学ぶ「日本人の心理」

 今朝の毎日新聞「この人・この3冊」に早坂茂三さんが女流俳人鈴木真砂女(すずき・まさじょ)さんの書籍を取り上げていた。
 早坂さんといえば過去数回お会いする機会があった。いずれも相澤嘉久治さんとの関係からだった。

早坂茂三さんといえばあの田中角栄元首相の政策秘書として有名だが、相澤嘉久治さんの早稲田大学時代の先輩であることを知る人は意外に少ない。そのご縁で、相澤さんを励ます会が主催する早坂さんの講演会や米沢市での時局講演会のときに、(相澤さんの命令で)相澤さんと一緒に私も臨時秘書?をするなど、一緒にいる時間だけは長かった(もちろん早坂さんのご記憶にはないだろうが)。

 早坂さんの講演は、時代を創った与野党議員の役割と実績を分かりやすく話す。その中で「オヤジ角栄元首相」とご自身の二人三脚での苦労話を紹介する。その中から、「人間の本質を見抜く洞察力、相手の自尊心をどう見抜き利用するか」がテーマになっている。私はそのリアリズムに反発しながらも、あとから、自分の体験の中でなるほどと感心することが度々ある。「日本人の心理」を知り尽くした早坂さんならではの人間のリアリズムである。

 講演会前の早坂さんは、異常な緊張感と厳しい表情を見せる。照明やマイクひとつにも条件を付ける。それはいかに観客に不愉快なおもいをさせないで、講師共に気持ちよいひとときを過ごすかという気働きである。もちろん講師としてのプロフェッショナルが根底にある。

 米沢の米沢織物協同組合と信用金庫共催の講演会でこんなことがあった。早坂さんが事前指示の確認したところ主催者は「ご指示とおりです」といった。早坂さんがステージに上がったところ、指示したとおり準備が出来ていないではないか。早坂さんはマイクで優しく準備を指示するが、ステージの周りのスタッフが動かない。何度か指示する早坂さん。動きが鈍いスタッフたち。ついに堪忍袋が切れて「講師を馬鹿にするのか!?ならば私が準備するゾオ」とマイクからステージの花から片付けはじめた。相澤さんと私もステージに上がり一緒に片付ける。呆然としているスタッフと観客たち。片付けが終わると汗を拭き取りながら観客に向かって「たいへん不調法いたしました。いろいろ手違いがありました。さあ、お待たせいたしました」と何事もなかったように講演を始めるのだった。

 早坂さんにとっては米沢織物協同組合の主催であることにたいへん喜びをを感じていた。オヤジ角栄元首相が通産大臣時代に日米繊維交渉を行い、多少なりともこの米沢織には迷惑を掛けたおもいがあったからだ。しかし、早坂さんのおもいは主催者側ではだれも分かっていなかった。私はあとで信用金庫の幹部にこのことを伝えたが…

 さていつも講演が終わってからの早坂さんは優しい早坂さんになる。
 酒を飲むと顔を真っ赤にして、私の耳元に手をかざしながらこういうのだ。
「相ちゃんを頼むぞ、いや嘉久治さんを頼む」と力を入れて握手をするのだ。このときばかりは相澤後輩を思いやる優しい早坂先輩になるのであった。早坂茂三さんは相澤後輩のために、私たちに精一杯の笑顔で振る舞うのである。

 毎日新聞「この人・この3冊」での和田誠さんの早坂さんの微笑ましいイラストは、私たちに見せる優しい早坂茂三さんそのものだった。

 11月16日記

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