幼幻記8 仔猫とチョウマ





仔猫とチョウマ

 幼幻記 8


 幼いときの記憶がよみがえってくる。

 ばあちゃんと一緒に招待旅行で温泉に出かけた。

 夜にみなが寝静まった頃、バタバタと廊下から音が聞こえて来る。その音でぼくは目を覚ました。

 音はあちこちに移動する。その音は廊下から聞こえてくる。
「バタバタ~カチャ、カチャ、バタン、バタン、バタバタ」という音が繰り返して聞こえる。その音が耳に刺さって眠れなくなってきた。

 布団を被ってもバタバタと音は益々大きくなっていく。恐くてからだが震えてきた。

 私はいつの間にか涙が溢れて、ついに大声で泣いてしまった。

 ぼくの鳴声という「訴え」に驚いて目を覚ましたばあちゃんが音が聞こえる廊下に出てみると、仔猫がチョウマを追い掛けて騒いでいた。これが音の原因だった。

 ばあちゃんはぼくを廊下に呼び寄せて
「ほら、仔猫とチョウマだ」とやさしく言った。

 仔猫はいつまでも仔猫はいつまでもチョウマを追い掛けて騒いでいた。

 ぼくはばあちゃんの着物にしがみ付いた。

 2005年8月28日記


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