幼幻記11 パパのおしゃれ





パパのおしゃれ


 幼幻記 11



 パパは洗髪の後に髪を乾かすと整髪料をつける。そしてクシで髪を七・三に整える。

 仕上げは前髪だった。

 ちょうど額(ひたい)の真ん中辺りの前髪を親指と人指し指で摘み上げ、その髪をクルリと前髪の額に垂れるように下げるのだった。

 幼い私はいつもその光景を不思議に思い見ていた。

 私の視線に気付いたパパは私を手招きして、私の前髪をくるりと回そうとするが、坊ちゃん刈りの私の前髪は短く垂れなかった。

 パパはおしゃれだった。私はこの光景を、いまだにシャンプーをするたびに想い出すのだ。

 2005年9月15日記


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