美月らしく

美月らしく

2005.05.31
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カテゴリ: ストーリー
キミの名前をときどきネットで検索する。

キミと同姓同名の人がネット上には3人いるんだよ。
ひとりは中小企業の社長さん、もう一人は研究者、最後のひとりは社会人スポーツの選手なんだ。なんだかへんだね。同じ名前なのに、キミじゃない。

キミとはじめて会ったのは、春のまだ浅い3月はじめの自動車教習所。大学の春休み中の私と、予備校が始まる前の浪人生のキミ。ふたりとも早生まれだから、19歳と18歳になったばかりだった。
キミは、ガムばっかり噛んでたね。
いつもうつむきかげんに肩をすこし丸めて、少しみんなとは離れて。人なれしない子犬みたいに。
それで、キミの呼び名は「ガム」。

まだその頃は携帯がなかった時代で、信じられないくらい不便だったはずでどうしていたのかも思い出せないけど、ほんとによく会ってたよね。


「え…、ああ、ボク、たばこ吸えないから、それで」
「かわいいって言われてるよ」
「…ボクはいつも…手の届かないひとだなぁって思って…」

ガムはいつも少し拗ねている子どものような表情で、ひとりで自分をなんども反芻しながら時間をくりかえしているようで、放っておけない気がした。ほんとうの自分をそこに見せられているようなかんじがしたからかもしれない。
「オヤジが高二のときガンで亡くなって。母ひとり子ひとりってわけ」
「あ、あたしもひとりっこだよ」
「オヤジはあそこにみえるS病院で亡くなったんだ。人間ってたいへんだよね…」
「うん…」

その頃の私はまだ人間のたいへんさなんて、言葉の上や小説の上でしかわかっていなかった。わかっていないということをわかってもいなかった。

ガムはなんという用もなしに、よく手紙を書いてくれた。
いつも会って話しているのに、手紙に書いて手渡してくれた。内容は、ひとりでいるときの、心の中のあれこれ。話すときにはなんだかうまく自分を出せないものどうしだったから、書かれている文章の中からお互いをさぐって作り上げていった。


ふたりともいちばん言いたいことは、文にも言葉にもしなかった。
言わなくても、どこが大事なのか、なにが伝えたいのか、どんな気持ちを共有してほしいのか、ほんとうにはっきりわかりあえたよね。
まるでふたごのかたわれみたいだ、ずっとそう思ってたよ。

やっと会えたいちばん大切な人だった。もう二度と会えない同じ心の持ち主だった。
なのに、なぜ素直に自分の気持ちを言えなかったのだろう。婉曲なんてばかげた遊びに自分の感情をカモフラージュして、少しばかりおねえさんのつもりでいた。ほんとは私のほうがうんと子どもだったのに。



美月は以前はショートストーリーやショートエッセイを書いて
いました。
みなしごだったのを今のボスに拾われて、
長い文章を書くようになり、その機会はなくなっていきました。
ちょっとラブものが書いてみたくてはじめてみたけど、
一回じゃ終らないから、今日はここまで。
また、続きがあるかも知れないし、これで中絶かも知れないけど、
ここまで読んでくださってどうもありがとうデス。

では、またまた。





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最終更新日  2005.06.01 00:27:35
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