美月らしく

美月らしく

2005.06.30
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カテゴリ: ストーリー
雨の日だった。ふたりでいつものヨットハーバーの前にあるカフェにいた。

店内に流れるイーグルスの「ホテル・カリフォルニア」がせつない気持ちを充満させていた。
ほんとうはそのとき哀しかったのかどうか、今でははっきり思い出せない。
後から自分の記憶が、その時のシーンを哀しかったのだというカテゴリーにやきつけてしまったのかもしれない。

ガムからもらったその日の手紙。
よく読んだ。よく読まないと、特にその日の手紙は、どんなふうにでもとれるような書き方だった。
何度も読んだ。
ガムは黙って「ホテル・カリフォルニア」を聴きながら、ヨットのさおばかりが揺れる波間を見ていた。

「ずっとともだちでいようよ。そのほうが、ずっと長くいっしょにいられるよ」

ガムは何も言わずに、じっと私を見た。見つめるには長い時間だと感じられるくらい、見つめた。
私は何か言わなければとあせって、さらに言うべきでないことを言った。
「ガムとずっとともだちでいたいよ」

沈黙が哀しい旋律を際立たせた。永遠のように思われる時間が流れたあと、ガムが低く答えた。
「つまり、ぼくは、ともだちにしかなれないってことだね」

違う。違う、ぜんぜん、違う。
「ともだちがいいんだよ。そのほうがいい…」
違う。ぜんぜんよくない。ともだちなんてつまらない。まったくつまらない。
「そのほうがずっと幸せでいられるじゃない」

「わかった。・・・明日から、ぼくはミツキのともだちになる」

そうしたら私も答える。もうともだちはやめようって。
そうしたら… そうしたら…

私の瞳はたぶんガムにすがっていた。でもそれをガムはもう見なかった。
ガムは立ち上がった。
「もう帰ろう」






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最終更新日  2005.06.30 13:28:12
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