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2009年08月22日
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 ネリュートの手にあるのは光剣のみ。光剣では総機鋼甲冑に干渉制御され、存分な働きはしない。実剣なればこそ、総機鋼甲冑に対抗できたのだ。
「ネリュート・シュガーミの名と血、その契約により汝の顕現を請う。風塵と伴に舞い降り、その烈風、彼の愚者達に示し給え! 風香!」
 ネリュートを中心に風が舞う。結果的にその風は敵の歩みを止め、やがて一つの形となる。
「あら、姐様。お久しゅう」
 銀髪を結い着物に似た衣服を着崩した美女、それがネリュートの傍らに立っていた。
 この状況で防御の為とは考えにくい。それならば総機鋼甲冑のように、全身に装着する状態で召還するはずだ。ならば条約違反を犯し攻撃に使用するか、逃亡する際の囮とする為、敵はそう解釈したようだ。
「守護システム、か――しかしこの状況で、どう……」
「あらあら、無粋な機械人形と一緒にされるなんて、心外の極みですわ」

「しかし、姐様ともあろうお方が、私を召還なさるなんて珍しい……いいえ、初めての事ですわね。私としては姐様に頼りにされて大変うれしゅうございますが、どういった風の吹き回しですか? フフフ、風の吹き回し、といっても、別に“風香”にかけているわけじゃないですわよ」
 風香が片手間といわんばかりに敵に風を起こしながら楚々と笑った。
「この私と刀一本で対等に渡り合う姉様が」
 風が彼らの抵抗力と拮抗し敵の動きが完全に止まった。
 それはこの現象を理解しきれていないからでもあるのだろうが、彼らが目の当たりにしている風香が何者で、その風がどういった性質の物なのか、それを知るはずもない。
「あー、これ、この通り」
 ネリュートは折れた刀を風香に振って見せた。
「あら、刀が……ご自慢の鈴鳴はどうなされたんです? あぁ、主様のご意向で後継者にお渡しになられたのでしたわね。なるほど。一級品程度の刀では、姐様の気を受け切れませんでしたか」
「そういう事ね。私もまだまだ未熟ね」
「フフフフ。一国の王女として生まれ、元帥として第一艦隊を率い、私と互角の剣術を振るい……これ以上強くなられてどうなさるんです?」
「大切なものを護る為――って、まとめておこうかな」

「ありがとうね。でもここメビルスの中だから、控えめにネ」
「ウフフ。了解ですわ姐様。早く終わらせて、お茶にでもいたしましょう」
 風の質が変わる。今までただ強烈に吹いていただけの風が、斬るような鋭さを持って彼らを襲う。
「そ、総機鋼兵を前に! 盾で壁を作り前進!」
「り、了解ッ!」

「あらあら、最近の機械人形さんは結構丈夫ですのね。ならば、これなどどうでしょう?」
 風が再び変わる。薙ぐ風から突く風に変わり、威力の全てを一点に集中させたそれは、まるで高射砲の一撃のように、防御力に秀でているはずの彼等を貫いた。
「ごめんなさいね。本当は立場的にはあなた方の味方をしなくてはならないのですけど」
 風香の二撃目が再びアルバール兵の壁を穿つ。
「私達の契約は国ではなく個人に対して行われるものですから。それに主様はあなた方を嫌っておられる様子ですし。許してくださいましね」
 三撃目、四撃目……荒波が砂山を削っていくように、アルバール兵の壁が消失していく。
 最後の一撃――というその時、艦が大きく揺れる。
「風香――ッ! どこか変な所に当てちゃった?」
「いいえ。そんなことはありませんよ」
「じゃ、この揺れは何?」
 次の瞬間、向かい風が吹いた。
 そして警報が鳴り響く。
「空気流出警報?」





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最終更新日  2009年08月23日 20時49分09秒
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