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元MONOZUKIマスターの独白
第一篇第六章
第一節 純粋な流通費
一 売買期間
P158L1
商品から貨幣への、また貨幣から商品への、資本の形態転化は、同時に資本家の取引であり、売買行為である。資本のこの形態転化が行なわれる期間は、主観的には、すなわち資本家の立場からは、販売期間と購買期間、すなわち彼が市場で売り手または買い手として機能する期間である。資本の流通期間が資本の再生産期間の必要な一部分をなしているのと同様に、資本家が売買し市場を歩き回る期間は、彼が資本家として、すなわち人格化された資本として機能する期間の必要な一部分をなしている。それは彼の営業期間の一部をなしているのである。{・・・・・商品がその価値どおりに売られるとすれば、価値の大きさは、買い手の手にあっても売り手の手にあっても変わらない。ただその存在形態が変わっているだけである。商品がその価値どおりに売られないとしても、転換される諸価値の総額は元どおりで変わらない。一方の側でのプラスは他方の側でのマイナスである。
ところで、変態W-GとG-Wは、買い手と売り手のあいだで行なわれる取引である。このような取引がまとまるためには時間が必要である。ことに、ここでは互いに相手よりもたくさんもうけようとする戦いが行なわれるのであって、・・・・・互いに対立しているので、ますますそうである。しかし、価値をつくりだすために必要なのではなく、一方の形態から他方の形態への価値の転換をひき起こすために必要なのであって、このことは、互いにこの機会に乗じて余分な価値量を取得しようとする試みがなされても、少しも変わらないのである。・・・・・10}
10 以上の括弧内の記述は第八稿の終わりにある覚え書きからとったものである。
P160L12
自分のために他人に労働させる資本家にとっては、売買が一つの主要な機能になる。彼は、多くの人々の生産物をかなり大きな社会的規模で自分のものにするのだから、やはり大きな規模でそれを売らなければならないし、後には再びそれを貨幣から生産要素に再転化させねばならない。しかし、売買期間は相変わらず価値をつくりだしはしない。そこへ商品資本の機能によって一つの幻想がはいってくる。だが、ここではまだこの幻想に詳しく立ち入らないにしても、次のことだけははじめから明らかである。すなわち、それ自体としては不生産的であっても再生産の必然的な一契機である機能が、分業によって、多数の人々の副業から少数の人々の専業にされ、彼らの特殊な営業にされても、この機能そのものの性格は変わらないということである。一人の商人(ここでは諸商品の形態転化の単なる担当者、単なる買い手および売り手とみなされる)が彼の仕事によって多くの生産者の売買期間を短縮することがあるであろう。その場合には、彼は、むだなエネルギー支出を減らしたり生産期間の解放を助けたりする一つの機械とみなされてよいのである。・・・・・第一に、社会的に見れば、相変わらず一つの労働力が10時間のあいだこの単なる流通機能に消費されるのである。この労働力をほかのことに使うことができず、生産的労働のために使うことはできない。ところが、第二に、この2時間の剰余労働は、それを行なう個人によって支出されるのであるが、社会はそれには支払わない。それによって社会は余分の生産物や価値はなにも受け取らない。・・・・・ところが、もし資本家がこの担当者を使用するとすれば、この2時間の不払によって、彼の資本の流通費、すなわち彼の収入からの控除になる流通費は、減少する。彼にとってはこれは積極的な利得である。なぜならば彼の資本の価値増殖にたいする消極的な制限が小さくなるからである。・・・・・
どんな事情のもとでも、このために費やされる時間は、転換される価値にはなにもつけ加えない
流通費である。それは、価値を商品形態から貨幣形態に移すために必要な費用である。資本家的商品生産者が流通担当者として現われるかぎりでは、彼を直接的商品生産者から区別するものは、ただ、彼がより大きな規模で売買し、したがってまたより広い範囲で流通担当者として機能するということだけである。しかし、彼の事業の大きさが、彼が自分の流通担当者を賃金労働者として買う(雇う)ことを必要にするかまたは可能にしても、この現象には事実上変わりはないのである。
二 簿 記
P163L14
現実の売買のほかに労働時間は簿記でも支出され、この簿記にはまたそのほかに対象化された労働、すなわちペンやインクや紙や机や事務所費がはいってくる。つまり、この機能には一方では労働力が支出され、他方では労働手段が支出される。この場合も事情は売買期間の場合とまったく同じである。・・・・・個々の商品生産者がただ自分の頭のなかで記帳しているだけだとか(たとえば農民の場合はそうであって、資本主義的農業がはじめて簿記を行なう借地農業者を生みだすのである)、生産をしていない時間にただ片手間に自分の支出や収入や支払期限などを記帳しているだけのあいだは、このような彼の機能やそのさい彼が消費するかもしれない紙やその他の労働手段は労働時間の追加消費を表わしており、このような労働時間や労働手段は必要であるとはいえ、彼が生産的に消費しうる時間からも現実の生産過程で機能して生産物形成と価値形成に加わる労働手段からもそれだけの控除がなされることになるということは、まったく明らかである。この機能が資本家的商品生産者の手に集中されて、多くの小さな商品生産者野ではなく一人の資本家の機能として、一つの大規模な生産過程のなかの機能として現われるということによって、この規模が拡大されても、また、この機能を付属物としていた生産的な諸機能からこの機能が分離されて、ただこの機能だけを託された特別な担当者の機能として独立かされても、このようなことによってはこの機能そのものの性質は変わらないのである。
三 貨 幣
P166L12
・・・・・資本主義的生産の基礎の上では、商品が生産物の一般的な姿になり、生産物の大部分は商品として生産され、したがってまた貨幣形態をとらなければならないのだから、つまり、商品量が、すなわち社会的富のうちの商品として機能する部分が、絶えず増大するのだから――ここでは流通手段や支払手段や準備金などとして機能する金銀の量もまた増加する。このような、貨幣として機能する商品は、個人的消費にも生産的消費にもはいらない。貨幣は、社会的労働が単なる流通機械として役だつような形態に固定されたものである。社会的富の一部分がこの不生産的な形態に拘束されているということのほかに、なお、貨幣の摩滅は、その不断の補填を、またはより多くの社会的労働――生産物形態での――がより多くの金銀に転化することを、必要とする。・・・・・金銀は、貨幣商品としては、社会にとって、ただ生産の社会的形態から生ずるにすぎない流通費をなしている。それは商品生産一般の空費[faux frais]であって、この空費は、商品生産の、また特に資本主義的生産の、発展につれて増大するのである。それは、社会的な富のうちの流通過程にささげられなければならない一部分である。
第二節 保管費
P167L12
価値の単なる形態転換から、すなわち観念的に考察した流通から生ずる流通費は、商品の価値にははいらない。・・・・・われわれがこれから考察する流通費は、これとは性質の違うものである。この流通費は生産過程から生じうるものであって、ただこの生産過程が流通のなかでのみ続行され、したがってその生産的な性格が流通形態によっておおい隠されているだけである。他面では、それは、社会的に見れば、単なる費用であり、生きている労働なり対象化されている労働なりの不生産的な支出だと言えるのであるが、しかし、まさにそうであることによって、個別資本家にとっては価値形成的に作用することができ、彼の商品の販売価格への付加分をなすことができるのである。これは、すでに次のことからも出てくることである。すなわち、このような費用は生産部面によって違っており、また場合によっては同じ生産部面のなかでも個別資本によって違っているということがそれである。この費用は、商品の価格につけ加えられることによって、個別資本家の負担になる程度に比例して配分される。しかし、価値をつけ加える労働はすべて剰余価値をもつけ加えることができる。そして、資本主義的基礎の上では、つねに剰余価値をつけ加えるであろう。なぜならば、労働が形成する価値は労働そのものの大きさによって定まり、労働が形成する剰余価値は資本家が労働に支払う程度によって定まるからである。だから、商品に使用価値をつけ加えることなしに商品の価格を高くする諸費用、したがって社会にとっては生産の空費に属する諸費用が、個別資本家にとっては致富の源泉になることができるのである。他方、この流通費が商品の価格につけ加える付加分がただこの流通費を均等に配分するにすぎないかぎりでは、流通費の不生産的な性格がそれによってなくなるわけではない。たとえば、保険会社は個別資本家たちの損害を資本家階級のあいだに配分する。とはいえ、このことは、このように平均化された損害も社会的総資本について見ればやはり損害であるということを、妨げるものではないのである。
一 形成在庫一般
P168L16
生産物が商品資本として存在しているあいだ、またはそれが市場に留まっているあいだ、つまり、それが出てくる生産過程とそれがはいって行く消費過程との中間にあるあいだは、生産物は商品在庫を形成する。・・・・・しかし、生産・再生産の流れは、大量の商品(生産手段)が絶えず市場にあるということ、つまり在庫を形成しているということを必要とする。・・・・・このような資本価値の立場に立ってみれば、商品資本が在庫を形成しているという状態は、目的に反する自発的でない市場滞留である。売れ行きが速ければ速いほど、再生産過程はよどみなく流れる。形態転化W´―G´での滞留は、資本の循環のなかで行なわれなければならない現実の物質代謝を妨げ、資本がさらに生産資本として機能することを妨げる。他方、G―Wにとっては、市場にいつでも商品があるということ、すなわち商品在庫は、再生産過程の流れの条件として、また新資本または追加資本の投下の条件として、現われるのである。
商品資本が商品在庫として市場に滞留するということは、建物や倉庫や商品貯蔵所や商品置き場を必要とし、したがって不変資本の投下を必要とする。また、商品を貯蔵所に運びこむための労働力への支払も必要である。そのうえ、商品はいたむものであり、有害な自然的影響にさらされている。それを防ぐためには、追加資本が、一部分は労働手段として、対象的形態で、一部分は労働力として、投下されなければならない。
P170L16
ところで、商品在庫の形成によって必要になる流通費が、ただ既存の価値が商品形態から貨幣形態に転化するための時間からのみ、つまりただ生産過程の一定の社会的形態からのみ(ただ、生産物が商品として生産され、したがってまた貨幣への転化を経なければならないということからのみ)生ずるかぎりでは――それは第一節にあげた流通費とまったく共通な性格をもつものである。他方、諸商品の価値がここで保存または増殖されるのは、ただ、使用価値すなわち生産物そのものが資本投下の必要な一定の対象的諸条件のもとに移され、また使用価値に追加労働を作用させる諸作業のもとに置かれるからにほかならない。これに反して、商品価値の計算やこの過程に関する簿記や売買取引は、商品価値が宿っている使用価値には作用しない。それらは、ただ商品価値の形態と関係があるだけである。それゆえ、前提された場合には在庫形成(それはここでは自発的でないものである)に伴うこれらの空費はただ形態転化の停滞と必要とから生ずるだけなのに、それにもかかわらずそれらが第一節の空費と区別されるのは、それらの対象そのものが価値の形態転化ではなく価値の維持だということによるのであって、この価値は生産物すなわち使用価値としての商品のなかに存在し、したがってただ生産物すなわち使用価値そのものの維持によってのみ維持されることができるのである。使用価値はここでは高められもふやされもせず、かえってそれは減少する。しかし、その減少は制限されて、使用価値は維持されるのである。前貸しされて商品のなかに存在する価値も、ここでは高められない。しかし、新たな労働が、対象化されている労働も生きている労働も、つけ加えられるのである。
P172L2
実際上は在庫は三つの形態で存在する。すなわち、生産資本の形態と、個人的消費財源の形態と、商品在庫または商品資本の形態である。在庫は一方の形態で増加すれば、他方の形態では相対的に減少する。といっても、その絶対量から見れば、三つの形態のすべてで同時に増大することもありうるであろう。・・・・・
このことはいろいろな条件に依存しているが、すべての条件が根本的に帰着するところは、中断が起きないように原料の必要量が絶えず供給されうる速さと規則正しさと確実さとである。これらの条件がわずかしかみたされないほど、つまり供給の確実さや規則正しさや速さが少ないほど、それだけ生産資本の潜在的な部分は、すなわちまだ生産者の手のなかにあって加工を待っている原料などの在庫は、大きくならざるをえない。これらの条件は、資本主義的生産の発展度に反比例し、したがって社会的労働の生産力の発展度に反比例する。したがってまたこの形態にある在庫もそうである。・・・・・一つの国について言えば、たとえば一年間の必要量のために準備しておかなければならない大きさは、運輸機関の発達につれて減ってくる。多くの汽船や帆船がアメリカとイギリスとのあいだを往来するようになれば、イギリスにとっては綿花在庫の更新の機会が増加し、したがって、イギリス国内に平均的に寝ていなければならない綿花在庫の量は減少する。世界市場の発展も、したがってまた同じ物品の仕入れ先が何倍にもふえることも、同じように作用する、同じ物品が別々の国から別々の時間に少しずつ供給されるからである。
二 本来の商品在庫
P176L13
資本主義的生産の発展につれて、生産の規模が生産物にたいする直接的需要によって決定される度合いはますます小さくなり、個別資本家が自由に処分できる度合いはますます大きくなる。それとともに、どの特殊な生産部門でも、商品として市場にある生産物、すなわち販路を求めている生産物の量は、必然的に増大する。長短の期間商品資本の形態に固定されている資本量は増大する。したがってまた、商品在庫は増大する。
最後に、社会の最大の部分が賃金労働者に転化させられる。すなわち、その日暮らしで自分の賃金を毎週受け取って毎日支出する人々、つまり自分の生活手段を在庫として見いださなければならない人々に、転化させられる。この在庫の個々の要素がどんなに流動的であろうとも、在庫が絶えず流動を続けられるためには、それらの要素の一部分は絶えず停滞しなければならないのである。
すべてこれらの契機は、生産の形態から生ずるのであり、またこの形態に含まれていて生産物が流通過程で通らなければならない形態転化から生ずるものである。・・・・・彼は彼の品物を貨幣に転化させねばならない。その品物が商品形態に固定されるために彼にかかってくる空費は彼自身が冒す危険であって、この冒険は商品の買い手にはなんのかかわりもないのである。買い手は彼に彼の商品の流通期間の代価を支払いはしない。価値革命が現実に起きているかまたはそれが予想されるような時期に資本家がわざと自分の商品を市場に出さないでおく場合でも、彼が追加空費を実現するかどうかは、この価値革命が到来するかどうかにかかっており、彼の思惑があたるかはずれるかにかかっている。だが、価値革命は彼の空費の結果ではない。だから、在庫形成が流通の停滞であるかぎり、そのために必要になる費用は商品には少しも価値をつけ加えないのである。他方、流通部面での滞留なしには、すなわち長短の期間資本が商品形態にとどまっていることなしには、在庫が存在することはありえない。つまり、流通の停滞なしには在庫はありえないということは、ちょうど貨幣準備の形成なしには貨幣は流通することができないようなものである。つまり、商品在庫なしには商品流通はありえないのである。資本家は、W´―G´ではこの必然に出会わなくても、G-Wではこれに出会うのである。彼の商品資本についてではないが、彼のための生産手段や彼の労働者のための生活手段を生産する他の資本家たちの商品資本については、この必然に出会うのである。
P179L13
商品在庫は、与えられたある期間にわたって需要の大きさにたいして十分であるためには、ある程度の大きさをもっていなければならない。・・・・・他方、在庫は絶えず解消するのだから絶えず更新されなければならない。この更新は結局はただ生産によって、商品の供給によって、行なわれるよりほかはない。この供給が外国からくるかどうかによっては、事情は少しも変わらない。この更新は、諸商品がその再生産に必要とする期間によって左右される。・・・・・生産者自身も、生産によって直接に左右されることなく或る恒常的な範囲の顧客を確保しておくために、自分の平均需要に相応する在庫高を保持していようとする。生産期間に対応して買い入れの時期が形成されるのであって、商品は同種の新品で補充することができるようになるまで長短の期間にわたって在庫を形成するのである。ただこのような在庫形成によってのみ、流通過程の、したがってまた流通過程を包括する再生産過程の、恒常性と連続性とは確保されているのである。
P180L18
商品在庫が在庫の商品形態でしかないものであって、この在庫は、もしそれが商品在庫として存在しないならば、社会的生産の与えられた規模の上で生産用在庫(潜在的な生産財源)なり消費財源(消費手段の予備)なりとして存在するはずだというかぎりでは、在庫の維持に必要な費用、したがって在庫形成の費用――すなわち在庫形成に費やされる対象化されている労働または生きている労働――も、ただ社会的生産財源なりの維持費が転化したものでしかないのである。この費用によってひき起こされる商品価値の引き上げは、この費用をただ按分比例的にいろいろな商品に割り当てるだけである。というのは、この費用は商品の種類によって違っているからである。在庫形成の費用は、たとえ在庫形成が社会的な富の一つの条件であっても、やはり社会的な富からの控除なのである。・・・・・
在庫形成の費用は、(1)生産物の量的減少(たとえば穀粉在庫の場合)、(2)品質の損傷、(3)在庫の維持に必要な対象化されている労働と生きている労働とから成っている。
第三節 運輸費
P182L7
ここで流通費のあらゆる細目、たとえば包装や品分けなどに立ち入る必要はない。一般的な法則は、ただ商品の形態転化だけから生ずる流通費はすべて商品に価値をつけ加えない、ということである。流通費はただ価値を実現するための、または価値を一つの形態から別の形態に移すための、費用でしかない。この費用に投ぜられる資本(これによって指揮される労働も含めて)は、資本主義的生産の空費に属する。その補填は剰余生産物のうちからなされなければならない。そして、この補填は、資本家階級全体について見れば、剰余価値または剰余生産物からの控除をなすのであって、それは、ちょうど労働者にとって自分の生活手段の買い入れに費やす時間がむだな時間であるようなものである。しかし、運輸費は非常に重要な役割を演ずるものだから、ここでもう少しそれを見ておかなければならない。・・・・・
それゆえ資本主義的生産の基礎の上では運輸業が流通費の原因として現われるとしても、この特殊な現象形態は少しも事柄を変えないのである。
生産物の量はその運輸によってふえはしない。また、運輸によってひき起こされるかもしれない生産物の自然的性質の変化も、ある種の例外を除けば、もくろまれた有用効果ではなく、やむをえない害悪である。しかし、物の使用価値はただその消費によって実現されるものであって、その消費のためには物の場所の変換、したがって運輸業の追加生産過程が必要になることもありうる。だから、運輸業に投ぜられた生産資本は、一部は運輸手段からの価値移転によって、一部は運輸労働による価値付加によって、輸送される生産物に価値をつけ加えるのである。このような、運輸労働による価値付加は、すべての資本主義的生産でそうであるように、労賃の補填と剰余労働とに分かれるのである。・・・・・
運輸によって商品につけ加えられる絶対的な価値量は、ほかの事情が変わらなければ、運輸業の生産力に反比例し、通らなければならない距離に正比例する。
ほかの事情が変わらない場合に運輸費が商品の価格につけ加える相対的な価値部分は、商品の容積と重量とに正比例する。とはいえ、これを修正する事情もたくさんある。たとえば、物品が比較的破損しやすいとか腐敗しやすいとか爆発しやすいとかいうことに応じて、運輸には大なり小なりの予防策が必要であり、したがって労働や労働手段の大なり小なりの支出が必要である。・・・・・
資本主義的生産様式は、運輸交通機関の発達によって、また運輸の集中――規模の大きいこと――によって、個々の商品の運輸費を減少させる。この生産様式は、まず第一にあらゆる生産物の大多数を商品に転化させることによって、その次には局地的な市場に代わる遠隔の市場をつくりだすことによって、生きている労働も対象化された労働も含めての社会的労働のうちから商品運輸に支出される部分を増加させる。
流通、すなわち商品が実際に空間を走り回るということは、商品の運輸に帰着する。運輸業は一面では一つの独立な生産部門をなしており、したがってまた生産資本の一つの特殊な投下部面をなしている。他面では、それは、流通過程のなかでの、そして流通過程のための、生産過程の継続として現われるということによって、区別される。
第二編 資本の回転
第七章 回転期間と回転数
P189L6
・・・・・資本の回転は、つねに、貨幣か商品かどちらかの形態にある資本価値の前貸で始まるのであり、またつねに、循環する資本価値が前貸しされたときの形態で帰ってくることを条件とするのである。循環1(G・・・G´)と2(P・・・P)のうちでは、剰余価値形成への回転の影響がおもに注目されるかぎりでは前者が固持されるべきであり、生産物形成への影響がおもに注目されるかぎりでは後者が固持されるべきである。・・・・・資本の循環が個々別々な過程としてではなく周期的な過程として規定されるとき、それは資本の回転と呼ばれる。この回転の期間は、資本の生産期間と流通期間との合計によって与えられている。この総期間は資本の回転期間をなしている。したがって、それは、総資本価値の一循環周期と次の循環周期とのあいだの間隔を表わしている。それは、資本の生活過程における周期性を、または、そう言いたければ、同じ資本価値の増加過程または生産過程の更新、反復の時間を表わしている。・・・・・
一労働日が労働力の機能の自然的な度量単位になっているように、一年は過程を進行しつつある資本の回転の自然的な度量単位になっている。この度量単位の自然的基礎は、資本主義的生産の母国である温帯の最も重要な土地果実が一年ごとの生産物だということにある。・・・・・
資本家にとっては、彼の資本の回転は、自分の資本を価値増殖して元の姿で回収するためにそれを前貸ししておかねばならない期間である。
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