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元MONOZUKIマスターの独白
第二篇第十五章
及ぼす影響
P314L1
この章と次の第十六章では、回転期間が資本の価値増殖に及ぼす影響を取り扱う。
たとえば九週間にわたる一労働期間の生産物である商品資本をとってみよう。いましばらく、固定資本の平均摩滅によって生産物につけ加えられる価値部分も、生産過程で生産物につけ加えられる剰余価値も無視することにすれば、この生産物の価値は、その生産のために前貸しされた流動資本の価値に等しい。すなわち労賃の価値と、この生産物の生産に消費された原料及び補助材料の価値に等しい。この価値は900ポンド・スターリングであり、したがって毎週の投下は100ポンドだとしよう。周期的生産期間は、ここでは労働期間と一致しており、したがって9週間である。その場合、ここに言う労働期間は一つの連続的生産物のための一労働期間だと仮定するか、それとも分離性の生産物のための一つの連続的労働期間だと仮定するかは、この分離性の生産物の一度に市場に供給される量が9週間の労働を必要とするものでありさえすれば、どちらでもかまわない。流通期間は3週間だとしよう。そうすれば、全回転期間は12週間になる。
第一節 労働期間が流通期間に等しい場合
第二節 労働期間が流通期間よりも大きい場合
第三節 労働期間が流通期間よりも短い場合
第四節 結 論
P347L18
{この章を印刷のために仕上げることには少なからぬ困難があった。マルクスは代数学者としては十分な心得があったが、数の計算、ことに商業上の計算には慣れていなかった。といっても、数冊の帳面の分厚な包みがあって、そのなかで彼はあらゆる商業的計算方法を多くの計算例について自身で試みているのではあるが。しかし、個々の計算方法を知るということと、商人の日常の実地計算に習熟するということは、けっして同じではないのであって、回転の計算では彼は混乱に陥ってしまい、そのために未完了な計算のほかにも結局いくつもの正しくない計算や矛盾が出てきたのである。以上に印刷した諸表のなかでは、私は最も簡単なものと算術的に正しいものだけを保存した。そして、おもに次のような理由からそうしたのである。
この面倒な計算の不確実な結果のために、マルクスは、一つの――私の見るところでは――事実上あまり重要でない事情を不当に重要視するようなことになってしまった。私が言うのは、彼が貨幣資本の「遊離」と呼んでいるもののことである。現実の事態は前に仮定された諸前提のもとでは次のようになる。
労働期間と流通期間との長さの割合、したがってまた資本1と資本2との大きさの割合がどうであろうと、第一回転が終わった後には、労働期間の長さだけの規則的な間隔をおいて、各一労働期間のために必要な資本――つまり資本1に等しい額――が貨幣形態で資本家のもとに還流する。
労働期間は5週間、流通期間は4週間、資本1は500ポンドだとすれば、第9、第14、第19第24、第29週、等々の終わりには毎回500ポンドという貨幣額が還流する。
労働期間は6週間、流通期間は3週間、資本1は600ポンドならば、第9、第15、第21、第27、第33週、等々の終わりに600ポンドずつが還流する。
最後に、労働期間は5週間、流通期間は5週間、資本1は400ポンドならば、第9、第13、第17、第21、第25週、等々の終わりに400ポンドずつの還流が生ずる。
この還流した貨幣がさしあたりの労働期間にとって余分であり、したがって遊離しているかどうか、またそのうちのどれだけがそうなっているかによっては、なんの違いも生じない。生産は現在の規模で中断なく進行するということが前提されているのであって、そうなるためには、貨幣がそこになければならないのであり、したがって、「遊離する」にせよしないにせよ還流しなければならないのである。もし生産が中断されれば、遊離も行なわれなくなるのである。
言い換えれば、たしかに貨幣の遊離が、つまり貨幣形態にある潜在的な単に潜在的な資本の形成が、行なわれるにちがいない。しかし、どんな事情のもとでもそうなのであって、ただ本文に詳述してある特殊な諸条件のもとだけでそうなのではない。そして、それは、本文で仮定されている規模よりももっと大きい規模で起きるのである。流動資本1に関しては、産業資本家は各回転の終わりに事業開始当時とまったく同じ状態にある。すなわち、彼は再びこの資本を全部一度に手のなかにもっているのであるが、他方彼はそれをただ少しずつ再び生産資本に変えて行けばよいのである。
本文のなかで肝要なのは、一方では産業資本のかなり大きな一部分が絶えず貨幣形態で存在しなければならないが、他方ではそれよりももっと大きな部分が一時的に貨幣形態をとらなければならないということの指摘である。この指摘は、この私の追記によってはせいぜい補強されるだけのことである。――F・エンゲルス}
第五節 価格変動の影響
P349L13
これまでわれわれは一方には不変な価格、不変な生産規模を想定し、他方には流通期間の短縮または延長を想定してきた。これに反して、今度は、回転期間の不変な長さ、不変な生産規模を想定するが、他方に価格変動、すなわち原料と補助材料との価格の騰落、またはこれらの要素のうち前のほうの二つの要素の価格の騰落を想定する。原料や補助材料の価格も労賃も半分だけ下がると仮定しよう。そうすれば、われわれの例では毎週100ポンドではなく50ポンドの前貸資本が必要であり、9週間の回転期間には900ポンドではなく450ポンドの前貸資本が必要であろう。前貸資本価値のうちの450ポンドはさしあたり貨幣資本として分離されるが、しかし生産過程は同じ規模で同じ回転期間と元どおりのその分け方とで続行されるとしよう。年間生産物も同じままであるが、しかしその価値は半分だけ下落している。・・・・・これが第一の結果であろう。
しかし、第二に、・・・・・この450ポンドは事業Xの循環から分離され、したがって追加貨幣資本として貨幣市場にはいって行き、追加成分として貨幣市場に作用するであろう。・・・・・他方では、生産の規模が(固定資本は別として)2倍にされることもありうるであろう。その場合には、同じ900ポンドの前貸資本で2倍の規模の生産過程が営まれることになるであろう。
他方、もし生産資本の流動的諸要素の価格が半分だけ上がるとすれば、毎週100ポンドではなく150ポンドが必要になり、したがって900ポンドではなく1350ポンドが必要になるであろう。事業を同じ規模で経営するためには450ポンドの追加資本が必要であろう。そして、このことは、それに比例して、貨幣市場の状況に応じて、大なり小なりの圧迫を貨幣市場に加えるであろう。・・・・・
しかし、第三に、生産規模が与えられており、回転速度も流動的生産資本の諸要素の価格も変わらない場合でも、事業Xの生産物の価格は下落または上昇することがありうる。事業Xの供給する商品が下がれば、それが絶えず流通に投じていた600ポンドの商品資本の価格は、たとえば500ポンドに下がる。とすれば、前貸資本の価値の6分の1は流通過程から還流してこない(商品資本に含まれている剰余価値はここでも問題外とする)。・・・・・だから、生産を同じ規模で続けるためには、100ポンドの追加貨幣資本が支出されなければならないであろう。
逆に、事業Xの価格が上がるとすれば、600ポンドの商品資本の価格はたとえば700ポンドに上がるであろう。・・・・・ところが、生産要素を補填するためには600ポンドしか必要でない。だから、100ポンドの遊離が生ずわけである。
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