花屋モンタのほわほわ日記

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2010年07月30日
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カテゴリ: カテゴリ未分類

それは、夏の日で。

とても、とても暑い日で。

前の日のテレビでは「明日は今年一番の暑さです。」とか何とか。

僕らは池袋の大きな公園に明け方の5時。

夏の夜明けはとても早くて、小鳥たちは待ちきれないように歌い始めていた。

帰る人、これから出かける人、自衛隊の勧誘員、正体不明の酔っぱらい、抱き合う男と女、または男と男。

たくさんの人達が、それぞれ、たくさんの時間を胸一杯に抱えて白みがかった空の下、誰に言われた訳でもないのに。

僕らはこ汚いベンチに座って、僕は缶コーヒー、君は確かコカコーラを飲んでいた。

話疲れた僕らの間に、僕のタバコの煙だけがユラユラと揺れている。

君はタバコを吸わなかったから、さぞ手持ちぶさただったろう。

君が夜の匂いを引き継いで僕に話す。

「本当に辞めちゃうんですか。」

僕は夏の朝の少し湿っぽい匂いを煙りと一緒に吸い込んで答える。

「うん。決めたんだ。」

「どうにか、ならないんですか。」 

「どうにもならんね。」

電車は動き始めたばかりの気だるさで、朝の空気を切り裂いていく。

僕は入道雲を想っている。

そして、海に行こうかと考えてみる。

「・・・お願いします。辞めないで下さい。」

「僕は多分やっていけないです・・・。」

君の力ない言葉で僕の海はかき消される。

「君は十分やっていけるさ。」

「そして、3ヶ月もすれば、すっかり元通りさ。」

君は飲み干したコカコーラの缶を握りつぶし、噴水めがけて思いっきり投げた。

噴水に腰掛けて抱き合っていたカップルがこちらを睨み付ける。

君は大きな声で

「あなたは何も分かっていない。」

そして、バックを手にすると駅に向かって早足で歩いて行った。

残された僕は、今度は驚いてこちらを見る噴水のカップルに片手を上げて謝り、君の細い背中を見えなくなるまで眺めていた。

それから、タバコを一本取り出して火を付けた。

もう一度、海を想った。

真っ白で大きな入道雲と真っ青で透明な海を想った。

砂は熱く焼けていてサンダルがなければ歩けないくらいだ。

僕は真夏の太陽を、その海の匂いを何とか思い描こうとした。 

でも、上手くいかなかった。

僕の海は永遠に消えてしまっていた。

炎はタバコの半分を染め上げ、その先端は蛍の光を思い起こさせた。

僕はタバコを蹴り上げる。

小さな火花が一瞬、夏の花火のように輝いて、瞬く間に消えていった。

しばらく、花火の消えた空間を見つめて、残りのコーヒーを飲み干すと、朝を急かす駅に向かって歩いて行った。

海のことをもう一度考えようかと思ったが、代わりに口笛を吹いてごまかした。

夏になると決まって夢に見るのです。

花屋モンタです。

暑いですから、みなさんお気をつけて!!






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最終更新日  2010年07月31日 03時23分30秒 コメント(6) | コメントを書く


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