日本でよく知られている紅茶にジャムを入れて飲むロシアンティーはロシアに存在しません。ヴァレーニエと呼ばれる果実の砂糖煮やジャム、キャンディ、角砂糖が紅茶のおともならば、口に含み甘さを味わった後に紅茶を飲みます。
東ヨーロッパの一部の地域、ウクライナやポーランドでは、ジャムを紅茶に入れて飲む習慣があるようです。
紅茶にジャムを入れるロシアンティーが日本で広まったのは、1951年に渋谷で創業したロシア料理レストラン「ロゴスキー」のメニューからだそうです。
アメリカのロシアンティーは紅茶にオレンジジュース、レモン果汁、シナモン、クローブ、砂糖が入ったホットティです。アメリカの南部で人気が高いそうです。教会でレシピ本も配られていたとか。このロシアンティーもロシアにはありません。
イギリスでロシアンティーを注文するとラム酒入りのレモンティーが出てきます。ロシアの皇室(ニコライ2世)に嫁いだイギリス王室のアレクサンドラ(ロシア最後の皇后)が祖母のビクトリア女王にレモンティーを振舞ったことが始まりと言われています。ヨーロッパの紅茶文化では、レモンの香りを楽しむことはあっても、生のレモンを入れることはないそうです。
紅茶にレモンの輪切りを入れる文化は17世紀後半のロシアで生まれました。ピョートル1世がオランダでレモンに一目ぼれしてロシアに持ち帰り、大きな温室でレモン栽培を始めたことがきっかけです。その後、貴族や大金持ちも温室でレモン栽培を始めました。19世紀の半ばに室内でも育つレモンの木が現れ、庶民も台所の窓際でレモンの木を育てるようになったとか。
ロシアで紅茶にレモンを入れて飲むことを広めたのは、ロシアの悪路によるそうです。旅人は乗り物酔いに悩まされました。当時、すでに塩味や酸味のある食品が酔い止めになることは知られていて、庶民は用意したピクルスや発酵キャベツを食べていましたが、裕福な人は休憩所(郵便局)で輪切りレモンを買い紅茶に入れて飲みました。すぐに街の上流階級のお茶会にも伝わり、レモンを入れた紅茶が飲まれるようになったそうです。
マリアおばあちゃんの紅茶の入れ方は、ティーポットに多めの茶葉を入れて、濃い紅茶を作ります。カップに濃い紅茶を少し注ぎ、ヤカンの熱湯を注ぎ、紅茶の濃さを調節します。最初はちょっと驚きましたが、この作法はロシアの伝統的なお茶の飲み方です。
ロシアは昔、サモワールでお湯を沸かしていました。サモワールはお湯を沸かすための金属製の伝統的器具で胴部の中央に石炭や炭、松かさなどの燃料を入れて燃やす構造になっています。サモワールのお湯が沸いたら、たくさんの茶葉で濃く出したティーポットをサモワールの上に載せて保温します。ティーポットから濃い紅茶をカップに少し注いだ後、サモワールからお湯を注ぎます。
ロシアの食卓の真ん中には、サモワールがあり、プリャニキ(糖蜜菓子)、バランカ(輪形パン)、プリューシカ(味のついた平たいパン)、キャンディ、角砂糖が並べられたそうです。今でもロシアは、ピローグ(パイ)やビスケットなどをつまみながら紅茶を飲みます。 最近は、紅茶に砂糖を入れる人が多数派ですが、マリアおばあちゃんは、角砂糖を口に含んで紅茶を飲むのが好きでした。そして、レモン入りの紅茶にコニャックを少し加えて飲むと身体に良いと信じていました。

ヨーロッパでは、ロシアンアールグレイという名のフレーバーティが販売されています。
Twiningsは、紅茶、ベルガモット、レモンのブレンド、LIPTONは、紅茶、オレンジピール、レモンピール、ヤグルマギクの花、香料のブレンドです。
ロシアでは、アールグレイをはじめ数多くの紅茶が販売されていますが、ロシアンアールグレイは販売されていません。
ロシアは紅茶の本場で、フレーバーティーもよく飲まれています。フランスのKUSUMI TEAはロシア人のパヴェル・クスミチョフが設立したものです。KUSUMIで人気のあるプリンスウラディミルは、ウラジミール大公によるキリスト教導入900周年を祝い、パヴェル・クスミチョフがブレンドしたもので、ベルガモットの香りを纏ったアールグレイにバニラ、柑橘類、スパイスをブレンドしたブラックティーです。
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ロシアに紅茶がいつ登場したのか諸説あるようですが、17世紀のはじめに中国から皇帝ミハイル・フェドロヴィッチに紅茶が贈られたという説が有力です。皇帝が紅茶を気に入り、中国と貿易協定を結んだそうです。18世紀から19世紀初頭にかけて、何百頭ものラクダに紅茶を載せた「隊商(キャラバン)」が中国から一年以上かけてロシアに運びました。当時、運ばれていた紅茶は、キームン(紅茶)とウーロン茶のブレンドだったそうです。キームン(祁門)は、かすかにスモーキーな香りと深い味わいが特徴の紅茶で、最上級のものはバラや蘭のような芳香があるそうです。
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