2015 12 月 ドイツ出張備忘録 8. Weingut Lubentiushof
クレーフを後にした我々は、今度は再びモーゼル川を下流方向へと小一時間走った。ニーダーフェルという村で、ルベンティウスホーフ醸造所 Weingut Lubentiushof
が目的地だ。
4.6ha
の畑を、川沿いの急斜面に持っているが、その土壌は、わずか
30km
ほど北西にある、マリア・ラーハの火山活動の影響を受けている。その火山が噴火したのは約
1
万
3
千年前のことだ。噴火しただけでなく、岩盤が押し寄せられるなどの圧力を受けて、粘板岩は平板ではなく褶曲して曲面を描き、硬砂岩、溶岩、石英混じりの砂岩や、鉄分を含む層などヴァラエティに富んでいる。しかしこの生産者のワインは寡黙な印象で、いぶし銀のような、あるいは月の光のような静けさを連想させる。
2014 年産の収量は、 20hl/ha 以下に留まった。というのも、 9 月 20 日の雹混じりの大雨で葡萄の状態は一気に悪化。やむを得ず、完熟を待たずに 10 月上旬から収穫を開始したものの、 50 ~ 60% の葡萄は使い物にならなかったからだ。

一番ベーシックな『シュポンターン』と名付けたリースリング辛口には、かすかにボトリティスのついた葡萄のヒントがあるが、非常に凝縮して複雑で余韻も長く、力の入ったワインだった。グーツヴァイン以上は、ひたすらミネラル感に富んで凝縮して美しい。単一畑のゲンス
Gäns
のカビネットには、マーガレットのような白い花の香りが漂い、ベリー系の心地よい甘味にたっぷりとしたミネラル感。同じ畑のトロッケンは、ほっそりとしてシリアスで非常に長い余韻。そう、シリアスなのだ、この醸造所のワインは。まるでドストエフスキーの小説でも読んでいるような気にさせる。そして
2003
のアウスレーゼ・ゴールド・カプセルは、途方もなくピュアで澄み切った甘口だった。
ステンレスタンクで野生酵母により発酵し、瓶詰めは収穫翌年の 9 月、つまり、次の収穫を入れるためにタンクを空にしなければならない時まで時間をかけて醸造する。亜硫酸は遊離亜硫酸量 30 ~ 40mg を目安に、瓶詰め前に添加する。オーナー醸造家のアンドレアス・バルトは、ザールの VDP 加盟醸造所、フォン・オテグラーフェンの醸造責任者も兼任している。

今回この醸造所を訪問した理由は、やはりオレンジワインだ。アンドレアスのフェイスブックに、オーストリアのセップ・ムスターやクリスチャン・チダで見たのと同じ、上部に開口部のある容量
500ℓ
位の木樽をアップしていたのだ。「でもあれは試しているだけで、まだオレンジワインを造っている部類には入らないよ」とアンドレアス。
4
~
5
週間マセレーション発酵して、既に圧搾して熟成しているところだそうだ。「開口部が大きいのは樽の中身をチェックしやすいからで、その点でも気に入っている」という。
この樽を導入したきっかけは、今年 VDP モーゼルの同僚達と一緒に、オーストリアの醸造所を訪問して回ったことだ。「セップ・ムスター、ヴェアリッチ、クリスチャン・チダのワインにとてもインスパイアされた。朝から沢山試飲したが、不思議なことに全然疲れなかった。それが亜硫酸の添加量によるものかどうかはわからないが。ムスターも、以前は積極的に亜硫酸添加ゼロに取り組んでいたそうだけれど、最近は必要最低限な量を添加する方向に変えているそうだよ」と言う。
毎年 VDP の同僚とその家族と一緒に国外の産地を訪問していて、それが今年はオーストリアだったそうだ。恐らくアンドレアス以外にも、オーストリアのヴァン・ナチュールに刺激を受けたモーゼルの生産者はいるだろう。
ドイツとオーストリアは 1985 年のジエチレングリコール・スキャンダルから別々の道を歩んできた。生産国としての規模もテロワールも文化も異なるが、それぞれ接点をみつけて歩み寄りつつあるのかもしれない。もっとも、それは全体からすればごくわずかな範囲にすぎないけれど。
(以上)
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