日々草

日々草

2008.05.27
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庭園型住宅の原型・グエル公園

今回はバルセローナにあるガウディの作品の紹介である

当時の人々もその斬新さに驚き
物議をかもした集合住宅
施主の私邸&高級アパートの
カサ・ミラ

カサ・ミラ正面
(ガウディ後期の作品、彼が手がけた最後の私邸。
すべて曲面の外壁は、波打つ地中海のよう。同じ窓は一つもなく、位相のずれは、
生き物のようなダイナミックさ。各住宅もすべて不規則で同一のものはない。)

現在も人が住み生活しているアパート。 その集合住宅の屋上は
ローマ兵を模した煙突群や換気口がある

カサ・ミラの屋上
(以前テレビの世界遺産の番組で、カサ・ミラの住人はインタビューに答えて、
「この煙突群は、風が吹くととても心地よい音がする」と言っていた。
内部も曲線を基調とした住宅であるが、人の生活しやすさ、快適さが貫かれているという)

ガウディの建築物の不思議、今も人々の心に深く訴えかけているもの
その奇抜さ、その装飾性にもかかわらず
周囲の景色に溶け込んでいる柔軟性
その力強いエネルギーと美しさは
何処から来るのか。

ガウディが活躍した19世紀末から20世紀初めの
カタルーニャは、産業革命による隆盛期。
繊維産業が栄えて、財をなした新興のブルジョワジーが競って
その富みに見合った新しい生活スタイルを求めていた。

その富が集中し、活気溢れた都市が
カタルーニャ地方の首都である
バルセローナ

カサ・バトリョー
(産業革命で財をなした新興ブルジョワジーたちが競って、
目立った建物を建てた新市街地区の通り。
モデルニスモの個性を競うアマッリエ邸(写真左)とガウディ作・パトリョ邸(写真右)
このパトリョ邸は、建物全体が海の怪物・ドラゴンそのものになっている。
上に紹介したカサ・ミラと同じ通り(グラシア通り)にカサ・バトリョはある。

建築家ガウディの才能を認めて
ガウディの多くの建築物の施工主となった
エウセビオ・グエルは
そのような新興の富裕な若き実業家の一人である。

ガウディが
そのグエルの依頼を受けて建てた
グエル邸

グエル邸玄関

グエル邸正面入り口のドラゴン
すごい迫力で鎮座している
これが個人の邸宅なのである

 グエル邸屋上

グエル邸屋上

グエル邸屋上の煙突は
まるでおとぎの国のキノコが林立しているよう
このような煙突や換気口は
カサ・パトリョやカサ・ミラの住宅では
さらに大胆に、迫力ある造形へと発展している

この実業家グエルが
自分の繊維工場の労働者たちのために、快適なコロニー建設をめざして、
市場、教会、60棟からなる住宅や公園を計画した。
赤茶けた荒地を、
快適に過ごせる田園都市にするプランをガウディに依頼した。

しかし、折りしも時は、
アメリカが自国内の建国を終え、海外に帝国主義的覇権を
求め始めた頃
米西戦争でスペインはアメリカに敗北、アジアでの覇権を失い
スペイン国内の繊維産業は大打撃を受けて
国内は大不況に陥った。

この田園都市構想は、
グエル公園と住宅2棟が完成しただけで頓挫した。

未完に終わり、グエル公園だけが今残されている

グエル公園

グエル公園の正面には
ギリシャ神話にも登場する海の怪物が
カタルーニャの紋章から首を突き出している。

グエル公園・ドラゴンの水飲み場
(破砕タイルの柔らかな曲面と複雑な色彩は、ガウディの作品の
特徴の一つである。)

その海の怪物の後ろに
鎮座するカラフルな
ドラゴン

グエル・ドラゴン
(ドラゴンの後ろに見えるコリント様式の円柱廊の空間は
市場になるはずであった。その上はバルセローナの街を一望できる広場となっている)

すごい迫力
眺める人の心に何かを
深く強く迫ってくるパワー。

とても装飾的に見えて、その装飾性を厳しく排して私たちの心に訴えかけるものがある

これに似たドラゴンは、
サンティアゴ巡礼街道のレオンにある カサ・デ・ボチネス の入り口にもあった。

この当時、カタルーニャ地方を圧巻した
モデルニスモ (注1) という美術運動は、
カタルーニャ民族主義、ナショナリズムと強く結びついていた。

カタルーニャは、バルセローナ伯国として、
ローマ帝国崩壊後から大航海時代まで、
地中海東部の覇権を握ったという歴史があった。
当時、産業革命をいち早く終え、成功した経済力を背景に
マドリードを中心としたカスティーリャ地方への対抗心から、
いわゆる文化の独自性を取り戻そうと、ルネッサンスにも似た
文藝復興運動が起きていた。
(スペインから独立国家となっていてもいいほどに思っていた、カタルーニャ)

その象徴的存在となったのがガウディである。
生涯、カタルーニャ語で通したガウディ、
生粋のカタルーニャ魂を生きた人ガウディ。

そのように考えていくと、ガウディの作品に多用されているトカゲやドラゴンの
造形物は、カタルーニャ地方の民話に出てくる
「サン・ジョルデのドラゴン退治」( 注2 )のドラゴンでもあるといえる。

カタルーニャ人としてのアイデンティティを満たすためにも、
必要不可欠のシンボルであったはず。

単なる装飾としてではなく、
カタルーニャ地方の人々の暮らしのなかに深く根ざしたドラゴン、
こころを通わせ団結するに必要なシンボル。

円柱廊の上部にある広場

グエル公園
(柱廊の上の広場は、波状のベンチがあり、破砕タイルの幾何学的文様が美しい)

破砕タイルのシンプルでモダンな幾何学文様
ベンチの座りごこちの良さなど

この広場からは、バルセローナの街も一望できる
地中海もはるか彼方に見渡せる。

石を積み上げて作られた散歩道
グエル公園

ガウディは工事を進めるとき、細部を描かず、工事を進めながら決定していく。

グエル公園の場合も自然を活かすやり方で工事は進められた。

建築資材は、極力、土地から掘り出されたものを使う。
掘り出された石があればそれを、
木々があれば、道や構造物がそれをよけて工事を進める

階段を予定していた場所にあった木を職人が切り倒そうとしたとき、
「この木がここで生長した歳月と、我々が階段を変更するのに要する時間とどちらが長いであろう。」
と言って、階段の位置の変更を指示したという。

このようにガウディによって、命を与えられた石や岩の散歩道

この公園は、
60棟の分譲住宅と一体となって街をつくるはずであった。
公共の庭園と個人の住宅が一体となって、
人々が憩い生活する街

職人の技が隅々に息づく街
丁寧な手作りの街

グエルとガウディが理想としたこの街は建設半ばで挫折したけれど、

こんな街こそ
これからの社会が実現すべき
人の住む街

緑豊かな森のなかに
この街が実現していたら
きっと、
それは、おとぎの国のようなやさしい街
奇抜さや装飾とみえる細部は
森の木々のなかでは
ごく自然に溶け込んでしまうのではないか。

ガウディは
ゲーテの次のような一節、《生命体の曲線は、最も合理的で美しく、
自然界には直線は存在しない。自然界の色彩こそにいのちがある》を、
生涯愛して、その思想を彼の作品に結晶させた。

又、ガウディは、
《形がより完璧であれば、装飾はいらない。彫像による演出は
必然的なディーテールの為の浮き彫りであって、装飾ではない》
とも、言っている。

ガウディは
そのモデルを自然のなかに求めその美しさを徹底的に自分の建造物のなかに
具現しようとした。

そして、
ガウディの理想は、100年余りを経た今も建設途上にある聖家族聖堂に
受け継がれて、脈打っている

聖家族聖堂
(今も建設中のサグラダ・ファミリア)

サグラダ・ファミリアの建設 のなかで、脈々と受け継がれている
その理想の高さ、壮大さ
なんという悠久

(注1 ): モデルニスモ ベルギーで19世紀後半に始まった「アール・ヌーボー」は、自然界にモチーフを取り、曲線を多用する美術様式である。この美術運動は、スペインでは、カタルーニャ民族主義と強く結びき、一種、政治的な文明復興の様相を呈した。様式的には、イスラムやゴシック様式をとりこみながら、モデルニスモという独自の様式を創造した。その運動の中心となったのは、バルセローナ。
(注2): サン・ジョルディのドラゴン退治  カタルーニャの神話のなかに出てくるお話。4世紀の頃、聖人ジョルディは、パレスチナのリダでお姫さまを助けるためのドラゴンを退治し、303年にニコメディアで殉死とされている。1667年には、カタルーニャ地方の祭日と認められた。現在では、4月2日がその祭日とされ、毎年、女性は男性に本を、男性は女性にバラをプレゼントする習慣となっている。






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最終更新日  2008.06.09 09:40:27
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