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カテゴリ: 1000憶系
てなわけで今週は水曜日(でしたっけ)に引き続き弐回目のお任せ
後は宜しくお願いします





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最終更新日  2008年03月21日 08時28分43秒
コメント(17) | コメントを書く
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魔法使いの弟子85  
(匿名)希望 さん
****

しっかりと仲直りをした朝・・・といってももう昼前だったが
「じゃあ、講義と会議だけだから、夕食は家で食べるから。」
玄関先で孝史は上機嫌で仁子の額にキスをした。

夏に向かう日差しの中
メタリックブルーのBMWが乾燥した空気をまいあげて走り去るのを見送り
仁子は伸びをしながら、花咲くランドでの彼の言葉をおもいだした。

“後悔しないか?”

『あの人が心配した理由がよく分かる。』
彼の隣にいるのは居心地が良すぎる・・・・というか油断すると仁子は時を忘れてしまう。

『もしあの時シドニーに一緒にいっていたら・・・。』
不器用な自分は研究者への道を完璧に断念していたに違いない。
しかし“南原孝史”という研究者としても刺激的な環境のなかで
自分がじっとしていられただろうか。
仁子は小さく首を横に振った。
「無理だわ。」
あの時、一緒に行っていれば、彼の予想、いや“予言”どおり彼のもとを飛び出したにちがいない。

「きっと自滅している・・。」

家庭を維持する事は平和に見えても、毎日が小さなトラブルや発見に満ちあふれている。
その中を仕事を、研究をしながらうまく泳ぎきる。
そんな器用なことは出来なかっただろう。

今のような家庭と研究の両立(最近はやや研究に傾きすぎではあるものの)は若い頃の自分、当時の自分には客観的にみて“能力的に”無理だ。
そして出産の間、かなり研究を控えることができたのも正直それまでの蓄積があったからだ・・・仁子は考えた。

(2008年03月21日 11時23分51秒)

魔法使いの弟子86  
(匿名)希望 さん

「だから、あのとき付いていったら・・・。」
自分の性格ではどう考えても行き着く先は“離婚”を申し出るということだ。
そして彼はきっとそれを受入れたにちがいない。
「その時は、私はきっと罪悪感でいっぱいになって。彼が止めても海音も史朗も置いて一人で私は出ていっただろうな、そう無一文で・・・う~ん、そりゃ荒んだだろうなあ。」
ため息をついた。

『つまり・・・あの人はいつも腹が立つくらい正しいのよ。』
仁子はエントランスの手すりに
感触を楽しむように手を滑らした。
静かに天井を見上げる。
『なんで分かるのかしら。』
彼と別れて反動で研究バカになっていた数年間は自分の人生にとって決定的な意義をもっていた。
絶対に必要だったのだ。
それが今なら分かる。

実際、この期間に彼女は生来のセンスと情熱、しつこさにくわえ研究のノウハウ、研究をチームで動かすコツを会得していた。
一人で行うこともだが、継続的な研究には他者との協力が不可欠だ。

彼と離れ離れだった数年は、そういった組織の中で動くコツ、そして組織を動かすコツに加え、彼女自身の能力を認めるシンパを、主に欧州でだが・・・つくることができた。(南原の作品といって彼女を冷たくあしらう日本の学会の連中とは違い、彼らはいまでも彼女を南原仁子ではなく敬意を込めて蒼井仁子とよぶ。)

仁子は不機嫌そうな声音で言った。
「・・・なんか私って彼の手の上で転がされているみたい。」
(この言葉を孝史がきいたら・・・転がされてぼこぼこなのは俺の方だと苦笑するに違いない)
やがて言葉と裏腹な幸福そうな笑顔を浮べ仁子は手すりから離れリビングに向かった。

(2008年03月21日 11時24分42秒)

魔法使いの弟子87  
(匿名)希望 さん
日本の学者達に“南原孝史の作品”と言われても今なら、むきにならずにっこりと笑える。
表面的な言葉に振り回されないくらい彼女は“大人”になっていた。

カーテーンのすき間から差し込む日差しはスポットライトのようにテーブルの上の雑誌を照らしていた。
Naturと仁子にはよく分からないパソコンの専門誌。
床にはご贔屓のチームの黒いキャップが落ちていた。
そして黄色と白のチェックのソファーにはカラフルな表紙の大学ノート。
「史朗にしてはめずらしいこと。」
キャップを拾い上げ人さし指でくるっとまわす。

雑誌とノートをそろえ、キャップをおく。
こうしておけば何も言わないでも史朗は帰宅後真っ先に片づけるだろう。
1を聞いて10を知るとはまさに彼のことだと仁子はいつも思う。
「ま、弟の分、姉が三倍返しでボケをしてくれるからちょうど良いんだけど。」
最近は姉弟の力関係が逆転し、海音が史朗に作況されている姿を時折仁子は目撃する。

一昨日もこのあたりで海音が史朗にしかられていた。
そのナントもほほ笑ましい(本人達にとってはいたって真面目な会話なのだろうが)様子を思いだし、仁子は笑顔を浮べた。
ゆっくりと窓にむかう。
午後に海音が帰ってきたら夕食の買物にでかけよう。

(2008年03月21日 11時25分41秒)

魔法使いの弟子88  
(匿名)希望 さん
今日は夕べの罪滅ぼしに彼の好きなラムを焼こう。

付け合わせには玉ねぎ入りと玉ねぎ抜きのサラダをつくろう。
「海音は一緒に買物にいくとして史朗は・・・。」そう言うとテーブルの上のキャップを見つめた。
あの子はどうせ帰ってくるなり両親のもめ事で中断していた早乙女邸のコンピューターシステムの構築に行ってしまうに違いない。
このところの日課だ。

「ほんと、私の血を引いていると思えない。」
最近では海音の同級生の女子の間で彼はアイドル化しているとも聞く。
「てことは教授の血か・・・・。」なんとなく嬉しかった。
『いずれにしても彼は本当に素敵な贈り物を私にしてくれた。』
史朗がおなかにいる事が分かったのはガラパゴスでの調査の時だった。
名前には“海”の文字はなかったが彼こそ孝史の愛する海が授けてくれた子だと仁子は思っている。
史朗が生まれた時その話をした時
孝史はうっすらと産毛のある史朗の頬をつっつきながら
“史朗がイグアナの息子だっていうのか?”といって笑った。

仁子は想い出に目を細めた。
(2008年03月21日 11時31分57秒)

魔法使いの弟子89  
(匿名)希望 さん

カーテンを開け
部屋に降り注ぐ日差しを一杯に吸い込む。
ユーカリの香がここちよい。

子供たちが帰ってくるまでに明日からの出張に向けてもう少し片づけをして、それから荷造りをしよう。

日本では“あの森”と“あの海”に会いに行く。
空港には神宮寺先生が迎えに来てくれることになっている。
翌日には鵯大に顔を出す。
森林研究所にはその翌日。
必要ならそこで数日間調査に立ち会う。(どうせ自分の事だ、ここが延びるに決っている)
その後、実家によってあの海に向かう。
そして実態調査の中心になっている阿部の研究室にしばらく滞在する予定だ。(ここでもまた予定は延びるだろう)

その合間に小さな湖沼で内密に実験している“浄化システム”の検討を南原からもらった資料を元にT大の柏木とする・・・。

「いっそがしくなるぞお」

部屋の真ん中で意味なく伸びをして彼女は笑顔を浮べた。
ロンドンを中心に活動し、海外で認められたのち家庭に入った仁子にとって、じつはこれが日本デビュー戦のようなものである。



*******
***
* *****

(2008年03月21日 11時32分13秒)

本日は  
(匿名)希望 さん
ここまでです
余談がはいって当初より長くなっています
よろしくお願いします (2008年03月21日 11時36分40秒)

癒されました  
北の大地の碧 さん
今朝はとても嫌な事があったので、こちらを読んで、心底癒されました。ありがとうございます。
優しくて柔らかで、幸せを感じる文章でした。
今日は特に、心に沁みてます…。 (2008年03月21日 12時39分00秒)

魔法使いの弟子90  
(匿名)希望 さん
「ねえ、お母さんとお父さんってケンブリッジの森で出会ったのね。」
「ロンドンよ。」
「でも、私が迷子になったあの森・・・ケンブリッジで出会ったってお父さん言っていた。」
「あのひとったらそんなこと話しをしてたの。」
「うん。お父さんはそこで眠り姫を起こした王子さまが自分だって・・・。」
「・・・・じゃあそれまで誰の毒でお姫さまが眠ってたかってきいた?」
「へ?だって悪い魔女でしょう。リンゴ食べてじゃないの?」
「う~~~ん。そのあたりお父さんに今度聞いてみなさい。それにリンゴは白雪姫。眠り姫はちがうでしょう。」
「そっか・・・うん。じゃあ今度、お父さんに“お母さんはなんで眠り姫になったの。”って聞くね。」
海音は楽しそうに頷いた。

娘の無邪気な笑顔をみながら、娘の質問に果たして彼がどう返事するのかとちょっと考えながら仁子は言った。

「そうね・・・お母さんとお父さんはいろいろなところで出会ったの。いろいろなところで別れていろいろなところで出会った。あの森でも出会った。ここだけの話、あの時のお父さん嘘みたいに素敵だったのよ。最初に出会った時とちっとも変わらなくて。ちょっと近所にいってきましたって感じで・・・いつもそうなんだけどね。“久しぶり”なんていったわ。」
そういうと仁子はにっこりと微笑んでプジョーを止めた。

ショッピングモールの駐車場についた。

仁子はサイドブレーキを引くと滑らかな動きで車をおりた。
細かいチェックのサブリナパンツに白い七分袖のTシャツ。
ポニーテールが滑らかに揺れる。
海音はいつまでも若々しい母をみてちょっと誇らしくおもった。

そういって嬉しそうに母親を見上げている海音は白いTシャツに仁子のパンツと色違いのチェックのスカート。
仁子とおそろいのポニーテールにはスカートと共布のリボンが結ばれてる。
本人はわかっていないがかなりかわいい。

(2008年03月21日 12時47分43秒)

魔法使いの弟子91  
(匿名)希望 さん
おっとりとした性格に、日本人独特の真っすぐな黒髪と滑らかな肌。
海音は学校では結構人気があった。
実際、彼女をデートに誘おうとしている男の子達が海音にアプローチをしているが・・・これらは見事(父と弟)に撃退されている。

仁子は自分に良く似ているといわれている娘を見下ろした。
『そっか、貴方がやってきたのも英国だったのよね。』
この子がいなければ頑固な仁子は孝史のとの運命の平行線を更に延長した可能性があっただろう。
「何?おかあさん。」海音は自分を見つめる母に問い掛けた。
「なんでもない。」そういって仁子はドアをロックすると「じゃあ、海音。お父さんの為にいちばん素敵なラムを手に入れましょう。」
海音の手をとった。
「うん。」
ポニーテールが揺れる。
「貴方はあの森のでの“運命の再会”をききたい?」
「聞きたい。」
海音は笑顔を浮べて母親に寄り添った。

「じゃあ、少しだけ昔話をしてあげましょう。お父さんだけに話しをさせるのもちょっとしゃくだから。えっとねその昔、お父さんはシドニーの海で洗濯をお母さんはケンブリッジの森で芝刈りをしてたのよ・・・。」
仁子は海音にケンブリッジの話しをはじめた。

*****
2009年6月 ケンブリッジ

(2008年03月21日 12時48分03秒)

碧さま  
(匿名)希望 さん
早速こめんとありがとうございました

89のあとに一つ抜けてましたので追加しました。
すいません

(2008年03月21日 12時49分27秒)

今日は一日・・・  
イリ さん
水曜日のお話のあと、思わず、私は過去に飛びました。ログ集を一から・・楽しい一日でした。でも柏木って、あの柏木・・・・
「お母さんはなんで眠り姫になったの。」どんないいわけするのか、私も聞いてみたい。
(2008年03月21日 13時15分34秒)

ほんわか  
riri さん
こうして昔を振り返れる仁子、今が幸せだからこそですよね。
イリさんと同じく、いっとう最初から読み直したくなりました。近いうちに時間を見つけて・・・♪ (2008年03月21日 16時44分25秒)

Re:今日は一日・・・(03/21)  
(匿名)希望 さん
イリさん
>水曜日のお話のあと、思わず、私は過去に飛びました。ログ集を一から・・楽しい一日でした。でも柏木って、あの柏木・・・・
あの柏木です
柏木はもともと南原孝史に心酔してますし
後ろめたさもあって日本で一番の協力者になっているというせっていです
>「お母さんはなんで眠り姫になったの。」どんないいわけするのか、私も聞いてみたい。
どういうんでしょうね
ごまかす
本当の事を言う
他にわるものをつくる・・・
童話の内容自体を変える? (2008年03月22日 09時47分04秒)

Re:ほんわか(03/21)  
(匿名)希望 さん
ririさん
>こうして昔を振り返れる仁子、今が幸せだからこそですよね。
はい
こちらの願望も込めて力いっぱい幸せになっていただいてます
>イリさんと同じく、いっとう最初から読み直したくなりました。近いうちに時間を見つけて・・・♪
ありがとうございます
考えてみると、長いですねこの話
孫まで書いてしまいましたから・・・。 (2008年03月22日 09時48分34秒)

Re[1]:今日は一日・・・(03/21)  
イリ さん
(匿名)希望さん
>イリさん
>>水曜日のお話のあと、思わず、私は過去に飛びました。ログ集を一から・・楽しい一日でした。でも柏木って、あの柏木・・・・
>あの柏木です
>柏木はもともと南原孝史に心酔してますし
>後ろめたさもあって日本で一番の協力者になっているというせっていです
>>「お母さんはなんで眠り姫になったの。」どんないいわけするのか、私も聞いてみたい。
>どういうんでしょうね
>ごまかす
>本当の事を言う
>他にわるものをつくる・・・
>童話の内容自体を変える?
-----
(2008年03月22日 10時06分14秒)

今日は一日・・・(03/21)   
イリ さん
すみません、操作を誤りました。ごめんなさい。
匿名希望様
どうか、匿名希望様バージョン(教授バージョンかしら)の童話自体の内容変更を、お待ちしています。 (2008年03月22日 10時11分02秒)

今頃なんですが・・・  
青空 さん
今日いっきに読まさせていただきました。
「あの人の隣に居るのは居心地が良すぎる」といった仁子・・・幸せが滲みでているようで・・・色々な葛藤もあったと思うけど、自然に、顔がほころんで来ます。
お姫様をくら~い眠りに落とした犯人は・・・
海音にどんな風に話されるのか・・・楽しみです。 (2008年03月24日 09時34分25秒)

【毎日開催】
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