チャッカンサラムチップ

ＧＯ（日本）

出演：窪塚洋介　柴咲コウ　山崎努　大竹しのぶ

最近巷で話題の「ＧＯ」。
主人公はコリアン・ジャパニーズ。（今はそう呼ぶらしい）
正確に言うと、在日朝鮮人。北朝鮮系の子供たちが行く
民族学校（中学校）に通っている。
ある日、父がおもむろにハワイに行きたいと言いだし、
国籍を韓国に変え、在日韓国人になった。
彼も、日本の高校に行くため、「在日韓国人になる」事にした。
民族学校時代の友人からは裏切り者と呼ばれ、
日本の学校にもいまいち馴染めずにいた彼の唯一の救いは
民族学校始まって以来の秀才、正一との語らい、
そして「桜井」と名乗る不思議な少女との出会いだった。
だがそれも長くは続かない。
彼は、傷つきながらも、ぶち破り、選び、
つかみとらなければならない何かを必死に探していた。

「在日」のジレンマをわかりやすく描いた
さわやかで切ない青春映画だ。
主人公の独白で
「これは僕の恋愛に関する物語だ」
としつこいくらいに念押ししているが、
裏を返せば、これは「自分探し」の物語といえる。
なぜなら、恋愛ほど自分自身を意識させられるものはないからだ。

それに、今の日本人には大人になっていく上での「制約」が全くないが、
いわゆる「在日」は、「自分は何者か」「自分は何人なのか」を
絶えず自問し、選び取っていかなければならないという、
試練というか、通過儀礼がある。（精神的にも物理的にも）
「国境なんて関係ない、民族なんて関係ない」と
口では言っているが、実際にはふっきれてはいない主人公。
不器用だけど、力強く「自分」を勝ち取っていく主人公の姿に
「制約」のない日本人は大きく心打たれるだろう。

主役の窪塚、柴咲はかなりの健闘だが、脇の役者がみんな本当によかった。
特に山崎、大竹の夫婦は最高に可愛くてお茶目で暖かい。
先輩役の山本太郎も役をよくつかみ、物語をぐっと締めている。
友人役の若手俳優陣も個性的だ。

また、私が何よりも喜びたいのはこの映画が日韓同時公開だと言うこと。
実は、韓国では、日本以上に
「在日」（韓国ではチェイル・キョッポという）の認識度が低い。
私のであった韓国人の中には、
「在日」は（法律上？国籍条項上？）日本人で、
韓国人または北朝鮮人ではないと思いこんでいる人もいた。
日本では法律上「日本人ではない」から、そのことを聞いたときには、
何か宙ぶらりんのような存在に感じ、ちょっと悲しい気分になった。
とにかくこの映画によって、
少しでも現在の「在日」への認識が上がればと思う。

また、エピソードとして「在日」の生活がよく織り込まれていて、
初めて見聞きする人たちにとっては、驚きだろう。
私が個人的に共感したのは指紋捺印の話と、外国人登録証の話。
韓国の入国管理所で、指紋捺印を経験したが、
その状況は「した」というより「させられた」という感じ。
自分の手が突然「もの」として扱われた事が、
当時の私にはかなりショックだった。
（指紋の採られ方は日本よりひどいと思う）
外国人登録証も持っていて、半分冗談だが、携帯してないと
警察に連れて行かれるということだ。
女の子はまあ大丈夫らしいけど、男の場合は道ばたにいる警官や軍人から
からかい半分に携帯しているかどうかを聞かれたりする。
そんな話を聞いて以来、持っていないとちょっと不安だった。
実際交通事故にあっても身元が分からないから、
そういう意味でも必要なのは分かるんだけどね。

いろんな意味で、今までの「普通」を破った映画だと思う、これは。
見て損はないと思います。

勝手評価；☆☆☆

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