成定 竜一~高速バス新時代~

成定 竜一~高速バス新時代~

2009.11.10
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カテゴリ: 高速ツアーバス
ここ2ヶ月で、高速ツアーバスの企画実施会社が2社、連続して経営破綻に陥った。「シティライナー」ブランドのトラベルメディア社と、「イーストウェストシャトル」ブランドのサン太陽トラベル社(商標は「サミーツアー」)である。後者は事前に予約受付を全面停止していたので一般利用者への影響はほぼなかったと思われるが、前者は先の予約を受けていた中での突然の事業停止であった。私のサイト経由でも数百件の予約があり個別に対応することとなった。該当の全ての利用者に連絡がつき返金対応することができたが、ご迷惑をおかけしたことに違いなく、10月いっぱいまで該当予約があったので本ブログでもコメントを控えていた点、ご理解いただきたい。高速ツアーバス企画実施会社の経営破綻は過去に数件発生しているが、私のサイトでは取扱いをお断りしていた会社たちであったので、今回の件は会社として初めての経験で考えさせられることも多かった(もっとも、宿泊施設、特に旅館では 廃業や事業停止はそれなりに発生 しているが)。

今回の件、まず事業サイドから話を進めると、破綻した両社はともに相応の歴史と規模を持つ旅行会社であった。トラベルメディアは15年、サン太陽は40年近い歴史があり、特に後者は学生旅行の代名詞的な時代もあったわけで、関西では、古くからの貸切バス関係者の皆さんを中心に驚きとショックを感じているようだ。公表されている年間取扱高など情報を総合すると、取扱高のうち高速ツアーバスが占める割合は両社とも数%(一桁半ば)であったと見られる。前者は、本業はリテーラーであり他社が企画実施する国内ツアーの販売では関西では大きな存在感があったが、先に書いたように旅行リテーラーという業種自体が先細り傾向の中、唯一、自ら企画実施しかつ収益源であったのが高速ツアーバス事業だった様子だ。業界紙によると、最後はなんとかリテーラー事業を縮小してバス企画実施事業に特化しようとする動きを見せたものの、間に合わなかったらしい。後者は、「あずみ野観光スキーバス事故」の際の企画実施会社という印象が近年ではやはり強いが、もともと関西発北海道・沖縄そして信州スキーに強いホールセラーで、関西で学生時代を過ごした人たちには「サミーツアー」ブランドは定着していたと言ってよい。スキー好きの私の家内も「え、ホンマにあのサミーが潰れたん?」という反応だった。ウェブ時代における旅行業の厳しさが意外な形で表面化したということであり、「副業の利益で本業の赤字を埋める」ことの難しさもまた、体現している。

利用者側に目をやると、「予約していたバスが走らない」ことは言うまでもなくいい話ではない。旅行会社が経営破綻した際には即事業停止となる蓋然性が大きく、より安定した運行を保証するには、本ブログにコメントをいただいたように「運行事業者が自ら催行する形に限定」すれば間違いなく前進であるし、突き詰めるならば「社会的存在感が大きく公益性が強い既存路線バス事業者に限定して許認可」すれば少なくとも上記事態は防ぐことができる。

一方、それが本当に利用者保護と言えるかという面も議論が必要だろう。参入する業態や事業者を限定し競争を制限すればするほど、安定の代償として商品は硬直化し価格も高止まりする。たしかに公益性の高い電力事業で「東京電力が倒産したから」というような理由で電気が止まれば大変だから、そのような産業では慎重に競争が抑制されるべき(鉄道や路線バス事業でもほぼ同様)である一方、「旅行」事業においては「旅行会社が潰れないよう競争を抑制しろ」という人はほぼいないだろう。数多くの旅行会社がアイデアや価格で競争しより魅力的な商品を提供することを多くの人が望んでおり、その上で、より安心に旅行したいという人は価格が高くても名の通った大手に申し込む。では高速バスという事業がそのどちらに近いのか、議論を通して正しい規制のあり方を考えていくべきである。法規制の一元化も議論の対象となろうし、競争排除による安定と競争による成長や機会平等とをどうバランスさせるべきか、その議論も肝心である(たとえば、事前予約率ほぼ100%で事業者が乗客の連絡先を把握できる長距離夜行路線と、フリー乗車が多く「バス停に行ったら毎時●分に●行きバスが来る」と習慣的に利用される昼行路線とでもそのバランスは異なるかも知れない)。

今回の件で一人ひとりの利用者と電話で話した実感値からすれば「返金さえしてもらえれば、お宅のサイトで別の会社のバスを予約するよ」という声が多かったのは確かで(むしろ「わざわざ全員に電話してるの?おつかれさま」など声をかけていただき涙が出そうになったり)、利用者の多くは「多数の選択肢から自分の意思で選んで申し込んだ会社」というご認識だったこともよく伝わってきたが、かといって「利用者がそういう認識だから予約したバスが走らなくても問題ない」などという気は一切ない。利用者に少なからず迷惑がかかったことは間違いない事実であるし、現在の高速ツアーバス事業が抱える問題点の一部が露呈したもので、これ以外にも課題は多いと思う。現行の乗合バスに係る法規制が高速バスに最適ではないといつも書いているのと裏表の関係として、現行の募集型企画旅行の法規制もまた高速バスに最適でないことは間違いない。だからこそ、きちんと議論してよりよい規制のあり方を皆で考えていくべきなのだ。

蛇足だが、このブログで高速ツアーバスのことをメインに書くのは久しぶり。ついつい既存事業者あるいは高速路線バス業態にばかりコメントしてしまう自分に、結局は既存側への愛着の方が大きいのかなと、あらためてハッとする。そしてとうとう、その既存事業者の乗合商品の取扱が、私のサイトでも明日から順次開始されるのである。最後の最後まで本当にバタバタして全身ぐったりという感じだが、ご決断いただいた既存事業者の経営者・担当者の皆様、ここまで導いてくれた協力者の皆様に、感謝の気持ちでいっぱいである。





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Last updated  2009.11.10 19:13:48
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経営破たん  
basukeiei さん
これからも、体力のないところが脱落し、淘汰されていくんでしょうね。

(↓)
ANAのゼロミッションにも驚きです。 (2009.11.10 21:10:29)

Re:企画実施会社の経営破綻(11/10)  
経済人@尾張藩 さん
いつも、ブログを拝読しております。
さて、今回の企画実施会社の経営破たんという問題ですが、高速ツアーバスが存在する以上、このようなことが発生することは当然のことです。何ら不思議なことではないと思います。
高速バス全体への規制という点では、私がたびたびコメントさせていただいておりますとおり「基本は一つ」がよいと考えています。その際は、路線バス事業者のみを是とするのでもなく、かといってツアーバスを、やや失礼な表現を使えば「野放し」にしておくことでもありません。
一刻も早く、、「高速バス」を包括的に規定しつつ、健全な競争の維持と安全に配慮した規制の両者をうまくバランスさせたルールを確立すべきかと考えます。 (2009.11.10 23:29:03)

Re[1]:企画実施会社の経営破綻(11/10)  
basukeieiさん、経済人@尾張藩さん コメントありがとうございます。
>高速バス」を包括的に規定しつつ、健全な競争の維持と安全に配慮した規制の両者をうまくバランスさせたルールを確立すべきかと考えます。
ご指摘のとおりかと思います。私が否定しているのは、「現状において」高速ツアーバスを違法だとして高速路線バスのみを正しいとする姿勢です。行政の姿勢を受けて、既存事業者でさえ公式な発言では「違法」ではなく「アンフェア」という批判の仕方に変えた今、高速ツアーバスを違法だというのは無理がありますし、一歩譲って高速ツアーバスが制度的に問題があるとかアンフェアであるとかしても、「だからこれまでの高速バスのやり方が満点だ」という感覚に閉じこもってしまうと高速バスの成長はありません。
現状を踏まえたうえで、いろんな制度のメリットデメリットを明確に言葉にして議論し、今後の高速バスのあり方を考えていくべきだと思います。
>体力のないところが脱落し、淘汰されていくんでしょうね。
そのとおりですね。競争である以上、経営力や商品内容(安全性への配慮を含む)に不足があれば淘汰が進む、それは当然で、逆に既存事業者が「結局は誰かが助けてくれる。会社がつぶれても事業は継続できる」とお考えなら、民事再生などは借金を帳消しにするという意味で社会に迷惑をかけることに違いなく、モラルハザードあるいは危機感が少し不足している点を危惧しています。 (2009.11.14 09:18:12)

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