成定 竜一~高速バス新時代~

成定 竜一~高速バス新時代~

2016.06.17
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カテゴリ: 高速路線バス
4月に開催されたセミナーで、三菱総合研究所が、高速バス事業者の導入も想定した廉価なレベニューマネジメントシステム(RMS)を紹介して以来、同社の後押しを兼ね、レベニューマネジメント(RM)の話を全国のバス事業者にあらためて説明して回っている。

私が最初にRMという概念をバス業界に紹介してから間もなく10年。その時は、当時の高速ツアーバス企画実施会社の連中でさえ、最初の反応は「それ、ホテルでは通用するけどバスではダメだよ」だったが、あっという間に定着し、彼らの収益性を大きく成長させることができた。多くの会社は、その収益を元に、それまで中古車両を一掃し、むしろ(別の要因も重なって)超豪華座席に象徴されるように事業体質を一変させた。さらに、その時点では「ウチは『乗合』だから運賃を変えるようなことはしない」と、論理にならないような反応を示していた「既存」各社でも、新高速乗合バス制度に幅運賃という概念が採用されたことで、今日では、乗車日によって運賃額が異なる「カレンダー運賃」が定着している。

一方、あらためて痛感するのは、「移行組」「既存組」双方で、本来目指すべきRMは実現していないという点。正直、不満だ。まず先に理屈っぽい不満が2点。一つは、RMとは「市場を細分化し、各々のセグメントに対し適切な価格や販路で販売する」手法であるのに、「繁忙=高値。閑散=安値」と、単純な売り方になってしまっていること。仮に「早目に予約する観光客と対照的に、予約は直近だけど必ず当該時間帯に乗らざるをえない出張客」というセグメントがその路線に存在するならば、彼らのために高値で座席を取り置いておく、というのが典型的なRMである(なお、そういうセグメントが各々の路線に存在するかどうかはわからない。その検証からRMが始まると言っていい)。だが今は細分化は単純に乗車日単位だけで、予測需要の総量と客単価が同じカーブを描いているに過ぎない。

二つ目は、精緻なデータ分析を行っておらず、担当者の経験値に頼る「緻密などんぶり勘定」でしかない点だ。これでは「なんちゃってRM」だ。だからこそ上述のような単純な単価コントロールしかできないのだ。既に、冒頭に上げた新RMS導入を決めてくれた事業者があり、運用開始に向けデータ整理を行っているところなので、その成果に期待している。

さらに、リクツは別としても、現実への不満も大きい。まず「移行組」においては、彼らの象徴たる首都圏~京阪神において、1900円といった極端な値付けも見られる。失望だ。なお、こういった極端な安値に対し「それでは安全が担保できない」と非難する人がいるが、実はその論理は成り立たない。大競争状態のこの種の路線で、販売力が弱い(と自己認識している)事業者自身に取ってみれば「従来4000円で販売していた時は実乗わずか数人だった平日でも、1900円で売ると40席満席になる。その方がよほど儲かるし、安全の原資も確保できる」というのが当事者の率直な意見だろう。短期的には、それは正しい。

問題は、どこかが1900円、さらに1800円を付ければ、競合先も同価格で対抗してくるという点だ。今は何とかマトモな価格で踏ん張っている、より販売力の大きい事業者が我慢できなくなって1900円に値下げした際、客単価は1900円で「実乗わずか数人」に戻ってしまうのだ。経営という観点で見て、短期的視野での極端な値下げが正しい戦略とは思えない。

以前は、認可運賃制度により、東京~大阪は税別8200円に(かつ、車両タイプも事実上3列シートに)統一されていた。高速ツアーバス成長により、超豪華座席から4列シートまで車両タイプは多様化し、さらに繁閑に応じた価格変動で、閑散日の4列車は4000円前後まで下がった(逆に繁忙日の運賃は8650円を軽く上回った)。あの時点での4000円という「底値」が市場の爆発的拡大に寄与したことは間違いない。しかし今、それが半額以下に下がったことで、需要を2倍に増やすことができているか? 答えは明らかに否である。(価格を下げることでどれだけ売れ数が増えるか、を「価格弾力性」「価格弾性値」と呼ぶが、それが1.0を下回る状況)。繰り返すが、個社単位では意義がある。だが業界全体では「囚人のジレンマ」に陥っているに過ぎない。RMは、決して「足元の空席を埋めるために安売りをしろ」とは言っていない。各社がRMの本質を理解した上で価格変動を行なうことが重要だ。RMの本質を十分に理解させないまま手法だけを導入してしまった私に責任がある。

一方の「既存組」。彼らは、憎き?高速ツアーバス(と、LCC)が導入した手法としてRMと出会った。そのため、高速ツアーバスへの対抗としてRM(らしきもの)を導入したから、「カレンダー運賃」は、高速ツアーバスからの「移行組」や航空と競合する長距離夜行が中心だ。しかし、多くの「既存組」にとって、長距離夜行ましてや「移行組」が幅を利かす首都圏~京阪神、名古屋、仙台線など大きな存在ではない。一部、直撃を受けた事業者(東北急行バスなど)にははなはだ申し訳ないが、高速ツアーバスがどれほど成長しても「既存組」全体から見れば蚊に刺された程度の話。しかし、それは、「高速バス市場の本丸」たる、高頻度運行の短・中距離昼行路線において、RMに取り組まなくていい理由とはならない。

もしも、である。昼行路線と競合する鉄道(あえて具体的に言えば、新幹線の一部区間や、特急「ひたち」「あずさ」さらに九州内の各特急などのこと)が先にRMを導入し、曜日や時間帯によって大きく運賃料金を変動させてきたらどうなるだろう?いや、既に一部のJR会社の幹部たちは、新聞のインタビュー等で、柔軟な運賃変動制導入について意思を明確に示している。それが実現した時になって、まるで夏休みの宿題をため込んだ小学生のように、慌ててRMに取り組むのだろうか?ましてや、この種の高頻度昼行路線は、電話予約や当日の乗車便変更、さらに車内運賃収受など、本格的なRMを導入するにはオペレーション上の障害が極めて大きい。今のうちに、3年後、5年後といったゴールを見据え、基幹システムの改修やオペレーション変更など一歩ずつ前進していく必要があるのだ。







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Last updated  2016.06.17 15:16:12
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京帝117@ ご参考まで この度 K電鉄バスの取締役安全技術部長に…
京帝117@ 残念でした 他にメッセージをお送りする方法を知らな…
成定竜一@ Re[1]:中央高速バス~ふたつの路線~(02/24) 京帝117さん、コメントありがとうございま…
京帝117@ Re:中央高速バス~この風は、山なみの遙かから~(03/02) 86年に私と、その後KKKに入社したH君の2…
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