七転び八起き母ちゃんの子育て失敗学のススメ

七転び八起き母ちゃんの子育て失敗学のススメ

長い長い1日がはじまった




しかし、普段は決断と行動の早さを自負している私も、

今回ばかりは、受話器を取るまでにかなりの時間躊躇しました。


通報したら最後、彼女の事はもちろん、私の名前や住所も

明かさなければならないでしょう。


自分の家族も巻き込むことになるかもしれません。


一時の正義感ですまされることではなくなります。


それでもようやく彼女にとことんつきあう覚悟をしました。


家族の事は、親が守るのは当たり前。


彼女をこれ以上見過ごすことも、やはり私にはできません。


専門家に相談して、なんとかよい方法を考えてもらおう。


私ができることはやってみよう。


そう決心して、電話をかけました。


虐待ホットラインの方は、私の話を聞いて、すぐに専門家に連絡を取り、

適切な指示を下さると言って下さいました。


時間はすでに真夜中の2時。


返事が来ました。


内容は、明日終業式があるけれど、親が待ち伏せをしているかもしれないので、

彼女を学校に行かせない事。


そして、9時に地域の「子供家庭センター」に電話して

もう1度、彼女の事情を話し、指示に従うようにということでした。


私は、翌朝彼女に話をしました。

「おばちゃんな、○○ちゃんが、このまま家に帰ったらまたえらいことになるから

もう、それは絶対あかんと思って、専門の人に相談してん。


そしたら今日は学校休んで、一緒にこれからどうしたらいいのか

考えようってことになったんよ。」


彼女は、昨晩から学校に行ったら、

お父さんが迎えに来るかもしれないと悩んでいましたから、

学校を休んでいいと言うことに、ホッとした様子で、


「そしたら、もう1日おばちゃんとこにいてもいいんやな!」


と、笑顔を見せました。


やはり彼女は、今日1日をどう乗り切るかしか考えられないのです。


自分の将来を考えることができるのは、その先に希望がある人だけなのかな、

そんな思いがよぎりました・・・。


それから9時過ぎに「子供家庭センター」に連絡をとり、

再び、現状と私が見聞きした彼女のこれまでを話しました。


センターは、彼女からも直接話を聞きたいので、

一緒にこちらに来てほしいと言われました。


私は、3兄弟に置き手紙をして、彼女を連れてセンターへ向かいました。


学校には、やはり母親から、彼女が一晩帰って来なかったので、

友達に居場所を知らないか尋ねて欲しいと要請が入っているとのこと。


センターは、私の名前を伏せて、通報者があったので

彼女を保護しているから、事態が解決するまで、

両親に居場所を知らせないように指示してくれたそうです。



とりあえず1つホッとしながらセンターに着くと、

早速担当者が彼女と面談をはじめました。


私は、ロビーで待機。


それが終わると、今度は交代で、私と担当者だけが面談しました。


彼女は、私に話したのと同じ内容を、素直に担当者に話していました。


担当者は、「6年間もかなり危険な目に遭われていたようですね。

これは、親に会わせず、すぐに施設に保護しなければいけないと思います。」

とおっしゃいました。


私は、ようやく彼女が救われる時が来た!と嬉しさがこみ上げてきました。



が、担当者はため息をついて、こう続けました。


「でも、彼女はどうしても施設に行きたくないと言うのです・・・。」


ここから長い長い1日がはじまったのでした。


<つづく>


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