Laub🍃

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2010.03.21
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カテゴリ: ●書
努力と我慢のためには目標、目的、信念と言った支えが必要になってくる。
かつてのギャッツにとってそれはギャツビーの栄光ある華麗な人生と来歴の夢想で、近年のギャツビーにとってそれはデイジー姫とその傍らに立ち、救い出す自身だったのだろう。洗練された所作と満足を知り諦めを知る目、金の声を響かせるのどを持ちながらも守りたくなるはかなさと危うげで遊び心に満ちた奇矯さ。
しかし、黄色い車を降りてからウィルソンに殺されるまでの彼にはかつてない、対等に近い友情が大きな力となっていたのではないか。

彼は自分を立ててくれる、上の人間以外に自分の来歴を明かしたことはあるのだろうか。

いや、ないだろう。
そんな彼が明かすことができたのは、奇妙な人間にさえ寛容に振舞ってくれる、ただし引きずり込まれはしない絶対的な安定感を持つニックという存在が居たからだろう。

ギャッツビーは努力しすぎだ。
そして他人からも最大限の努力を期待してしまう。
それは自分の努力ゆえか、夢想ゆえか。


そうしたギャツビーからすると、安全圏から出てこようとしない、そして欲張りで、あまり犠牲にすることなく、そこそこのものを得ることで満足する余裕っぷりを見せつける貴族達、特にデイズィとトムの様子はあこがれながらも理解しがたいものなのだろう。

ニックも親族だけあってその一員ではある。儲け話に誘われるような、一見あまり裕福でないように見えても、トムやデイズィ、ジョーダンに『同族』として認められるだけの所以は持っている。

ギャツビーはそれを持たない。所以と過去を持たないから、夢想で過ごした青年時代の自分の出自さえを後から得た金で買おうとしている。
金で得た屋敷や服や人脈をもってデイズィに認められることもそのうちの一つだろう。

現実を見て来なかったギャツビーが初めて夢想よりも選んで手を取った相手、それがデイズィだ。なればこそ、デイズィの身代わりとして捕まえられることも選べたのだろう。

デイズィやトムと違って、ギャツビーは崖のすれすれを歩いている。ふとした瞬間に全てが崩れかねない危ない橋を渡ることで、どうにかこうにか同じ目線を得ている。だからこそ、デイズィやトムと違って、得られないことにも、いつか崩れ去ってしまうことにも覚悟は心のどこかにあったのだろう。「女の子は馬鹿な方がいい」…安定と引き換えに得る諦め、疲れと引き換えに。




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ギャツビー関係感想・考察サイトメモ。

田園風景から空虚な社交界へ漕ぎだしたギャツビー

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最終更新日  2017.12.21 14:49:00
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