Laub🍃

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2011.03.04
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「花屋ー」
「……」
「例のDVD借りる準備できたぞ」
「行く」

俺の幼馴染、花屋は俺を普段うざったいと言ってるけど、こういったことには現金なんだから笑える。

「どんな奴を借りるのか知りたいか~?」
「お前の説明は要らん。……見るだけでいい」
「つれないなぁ」
「お前がうぜえだけだ」



ひらりと目の前に花びらがやってくる。
その大本を見て、ふっと目を細める。花屋はつまらなそうにふんと鼻を鳴らす。

最近綺麗な花が咲き始めてる。
だが、曇りがやたら多い。
花曇りと言うのだそうだ。

俺達の卒業はそんな形で見送られた。
問題児ばかりの世代ってことで先生達は号泣してたが俺等は苦笑いするしかなかった。
大体一代前の先輩方なんてもっとやばい人達が多かったしなあ。
その先輩方は号泣してたけど、ぶっちゃけ「あの先輩みたいにはなるな」と言われて育った世代は微妙に恩義を感じられないんだよな。

むしろ、お楽しみはその後だ。

「うっわ、グロっ!」

「やだーもーみせんなよこんなんー」

その勢いでせっかくだからとレンタルショップに立ち寄ってあるブツを借りてきた。
店員さんもオヌシなかなかワルよのうゆえに、卒業した俺達ならいいぜと貸してくれたのだ。


存外そのビデオは夢を見ていた俺達を打ちのめすのに十分だった。

「OH~…」


正直言ってOBの田中先輩の怒鳴り声よりいかつい。
まじか。いつもの女子の可愛い声もこんななるのか。
ぶっちゃけ怖い。

「……いいな」
「お前って本当俺等と逆だよな」
「お前と逆なだけだ」

俺達がドン引きしている横で花屋は目を輝かせている。

こいつもいつかこんなことをするのかな。
俺もするのかな。

こいつは多分適正があるんだろうけど俺には……はあ。

「女子に凄みまくるお前が変なだけだろ」
「凄んでるつもりはねえよ…緊張してうまく話せねえんだよ…」

男子相手にはおちゃらけまくれても、女子はなんつーか怖くてまともに接することができない。
うちの父ちゃんの口癖が「いいか…変な女に嵌るなよ…それぐらいなら一生独身でいいからな…」
だからか。
よくわからんけど昔あったトラウマを思い出すたびに酒を呑みまくる父ちゃんには何も聞けない。

「男同士でいいや俺は」
「やーいホモ」
「えっ俺狙われてる…!?」
「やだ草原くんたらえっちぃ!」
「違うわアホか。木村も穂高も悪乗りすんな。恋愛とかヤるとかいいっつってんだよ」

まーでもエッチなことはしたいかもなあ。
ふと花曇りを思い出す。
綺麗なものは表だけで、その奥にはぐちゃぐちゃした変なもんが渦巻いてる。

それも含めて愛せるようになるのか。ならねえのか。
親父を見て「ああはなるまい」とも「情けねえなあ…俺ぐらいは話聞いてやるか」と思う俺も頭を傾げすぎて折れそうだ。

「……おこちゃまだな」
「おこちゃまで十分」

それでいいっつってくれる人も居ればいいんだけどな。





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最終更新日  2017.05.03 14:33:46
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