Laub🍃

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2011.06.17
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カテゴリ: .1次小
はじめ会った時から、その怯えたような媚びる目が気になっていた。

だから世話を焼いた。

「アベント、こっちおいで。一緒にご飯食べよう」

優しくすればするほど懐いてくるその子は可愛かった。
まるで鏡のような子だった。

「ありがとう、マイゼ姉ちゃん」
「マイゼ姉ちゃん、花冠できた!あげる!」

こんな妹が欲しかった。
なんにでも好奇心を抱いて、なんにでも頑張る子。



だけどよく泣く子でもあった。

男の子にままごとでちゅーされたとか、前髪を間違えて切ってしまったとか。

だから一度泣かせてみたいと思った。

私がアベントを泣かせようとしたら、
それでも笑って見せるのか。
それとも私を嫌うのか。
それとも怒るのか。

新しい顔を見たかった。

子供の好奇心は残酷だと今なら思う。

けど、アベントは私が意地悪してもそれをスルーして。
それに苛立ったので私はアベントを無視した。


気に食わない。

全て私の思い通りのはずなのに。

私以外にそうして笑って見せる彼女は、まだ子供だった。

数年後、アベントはよく一人で行動するようになった。
私以外にもアベントの目は小さい頃から想像できないくらい暗く淀んでいて、ひどく無表情が似合っていた。


私はもう一度話しかけた。
悪戯も、その頃には身についていたイヤミも。

けれどアベントは無表情を貫いた。
その無表情が鏡のようで、私を映し出そうとするから、私は逃げた。

あの少女はどこへ行ったのだろう。
私のアベントは今はどこに居るんだろう。

代わりのように、媚びた目を向けるぬいぐるみを撫でた。

ぬいぐるみは笑わなかった。
泣かないし、怒らなかった。





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最終更新日  2017.04.09 07:55:44
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