Laub🍃

Laub🍃

2011.08.07
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カテゴリ: .1次メモ
 帰り道にその部屋を見上げるのは何度目だろう。
 ストーカーじみていると自分でも思うが、やめられないのだ。

 仕事が最近忙しいのだろうか。それともまた、誰かと呑みに行って相談に乗っているのだろうか。

 私の相談に乗ってくれたあの優しい顔で、声で。

 私は彼女の居る部署にあと数年で移れる。そうしたらもっと近付けるだろうか。

 彼女の声が好きだ。彼女の考え込む時に伏せる長い睫が好きだ。彼女に以前入れて貰えた部屋が好きだ。彼女の拒まない優しさが好きだ。彼女のときたま見せる厳しさが好きだ。

 でもこれはきっと、幼児が母親を頼る感情となんら変わりないのだろう。

 部屋を見上げていた目線を下げる。こうしてゆっくりとこの周りを歩いていたらこの間のように彼女とすれ違えるだろうか。

 彼女に相談したいことがまたできた。けれど彼女の部屋がこうも暗いと、忙しいのか、私が行くと迷惑なのではないかと思えてならなくて。



 その部屋はまだ暗くて、主の帰りを待っていて。私があの一部だったらよかったのに。そうしたら道に迷う事なんてなくて、いつも一つの機能を彼女の為にはたしていればよくて。

 それでも彼女を驚かせることはできないだろうから、だから私は彼女を驚かせることを覚悟しながらいつも厄介ごとを持ち込んでしまうのだ。

 ああ、灯りが灯った。

 やっと、やっと。

 痺れていた足はやっと本来の機能を取り戻して、目は何割か見開かれて。
 やっと、生き始められる。

 心の部屋に、灯りがともされたような、そんな感覚で私はその扉を叩く。







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 多忙な探偵事務所所長ヒロインとよく厄介ごとに巻き込まれたと相談しに来る系狂言回し女子





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最終更新日  2015.07.06 02:04:51
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