Laub🍃

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2011.08.25
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カテゴリ: .1次メモ
彼の笑い声が好きになれない。


彼は、自分の嫌いを他人に押し付ける。
僕が彼女を恋の目で見ている時も、
「またそんな尻軽女見てんの?」
と笑って言ってくる。
正直言って、とてつもなくうざったい。

しかし家が隣なせいで、親同士が親しいせいで離れられないジレンマ。

しかも、彼の罵詈雑言を繰り返し聞くうちに感化されてしまい、
何回か繰り返されるうちにその人を好きなところすら



嫌い。


眼鏡をしょっちゅう外されてどこかに隠されるのも、
長めの髪をからかわれ引っ張られるのももううんざりだったから、
イメチェンをした。
コンタクトと短く整えた髪。

爆笑された。


気持ち悪い。あいつの笑い声が気持ち悪い。



だから、殴った。
殴っても殴ってもあいつは笑っていた。

殴っている僕が泣いてもやつは笑っていた。
笑顔なんて大嫌いだ。



そういうやつが大嫌いだ。
誰のせいで笑えなくなったと思ってるんだ。
誰のせいで関係ない人の笑顔さえ苦手になったと思っているんだ。
誰のせいで。

「俺はお前の泣いてる姿が嫌がってる姿を見ているのが大好きだからな」




気付いたら、幼馴染の瞼付近は腫れ上がって見えなくなっていた。
かろうじて失明はしていなかったけれど、僕とやつは二度と会わないという話になっていた。





数年後。

彼と思わぬ所で再会した。
彼はお笑い芸人として開花していて、僕は笑えず戸惑った。

「どうして今の職業に?」
コメンテーターが聞くと、彼は昔より毒の抜けた、それでもやっぱり子供っぽい顔で笑った。
「そうそう、俺昔好きなやつが居たんですけど。いくら俺が笑わせようとしても笑ってくれなくて、他の人が笑わせてると妬いちゃったりなんかしたんですよね。俺それが悔しくてお笑い芸人になりましたー」
「俺らは踏み台かい!」
「お前がそんなロマン抱えてるなんてなあ」
彼の相方二人が突っ込む。
「いやいや、勿論今ではお笑いの神様が嫁さんですって。泣かせて、怒らせて、ビンタされましたし。今ならどつき漫才に持っていくとこですけどね」
「お前ドMやしな」
「この間の番組のアレはもう忘れてくれませんか!?」
これは、もしかして。もしかして、もしかして。
ふ、と笑ってしまった。

そんな自分がやっぱり嫌いで、
自分よりずっと強い彼が嫌いで、
泣けてきた。

最終更新日 2014.08.10 19:03:21





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最終更新日  2016.11.14 02:07:01
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