Laub🍃

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2011.09.08
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カテゴリ: .1次メモ
 独占というものは共有と近くも遠くもなる。
 共に統治することは、統治される側が「それは××様の話を聞いてからでないと」と反対する手段を、後ろ盾を持つということでもあるから。

 だから私は、
「あなたはいつも一緒に居るじゃない」
と、ブムンに言い放った彼女の言い方に、つい頷いてしまったのだ。
 彼女ーダフルンは、頭の良い少女だった。


 私は小さい頃沢山の夢を抱いていた。それこそ、将来の夢はと問われた時に返答に窮するくらいには多く。だが齢を捕るにつれ一つ減り二つ減り、そうして今の私が居る。
 最後に捨てた夢は、物語を作る事。

 その誘惑に私は負けた。

「彼女は彼を自らの居る闇に引きずり込みたくなかった。けれど、寂しかったことも事実だった。故に彼女の友人がお節介で彼をそこに『招待』したことを――心の底では、喜んでしまっていたのだ。」

「彼の想いは彼女を包み込み、気が付けば雁字搦めに縛ってしまっていた。それでも、今やどこにも憑代の無い彼女にとって、彼のその妄執のみが、現世とつなぎとめてくれる鎖だったのだ」
 こんなことはきっと他人に、それもこんな年の娘に話す話ではない。一人で楽しむか、同じ趣味を持つ人間と話すか――そうするべきだったのだ。ブムンを放ってする話ではない。
 だが、それでもそんな後ろ暗い滅多に話せないような話を語って相手が喜んでくれることが嬉しくて堪らない。

 話は長く続いた。話をしながらともに飯を食べ、街を歩き、そこでやっていた祭りで飾りを作る行事に参加し――……気付けば、外は桃色。
 彼女は宣言通りに、夕刻には帰って行った。その頃には私はブムンに愛想を尽かされていた。
 今後ブムンと逢う時には下手をするとそっぽを向かれるかもしれない。

 ……それも、仕方あるまい。

 そう思いながら、私は彼女という台風の残したものを片付ける作業に入ろうとして――ふと、手を止めた。
 ブラヴインに、彼女の親友ルシットと共に頼まれていたものを、これで仕上げてみようか。


 ダフルンははじめ、ブラヴインに対して露骨に顔をしかめたが、ブラヴインの優しさ楽しさを引き合いに出すと、「ではブラヴインだけなら」と言った。けれど、ブラヴインにとってきっと親友の居る時に親友と共に楽しまないのは罪なのだ。ブラヴインは「ルシットも一緒に」と言ったが、けれどルシットの真面目さや優しさを言ってもダフルンは納得してくれなかった。
 ルシットは何も言わなかった。私は、ダフルンの人間性があまりつかめなかった。以前フブクルと一緒に居る時は楽しそうに見えたのだが……

 ブラヴインはその後だか前だか、フォムがまた泣いている所を、いつもなら私が勝手に止めに行く所を、大抵ブラヴインが居る時はブラヴインと一緒に慰める所を、彼女一人で止めていた。

 彼女はきっと器の大きい娘になると思った。



「……ルシットは、ブラヴインの決めたこれに添うもう一つは何にしたいと思う?」

 ペア。揃いの飾り。それは光を反射して鈍く光っている材料から選ぶことが出来た。その片方をブラヴインは選び、そのまま私に暫し別れを告げたのだが、たまにはブラヴインやスピーネでなく、ルシットに選んでもらいたい。いや、選ぶところを見たい。

 ……だが、ことはそう私の思惑通りには運ばなかった。
「ブラヴインは何にしたの?」
 …その次は、
「クスムリア様はどうすればいいと思う?」
 ……恐らく彼女は、いつも人に会わせている故にいざ自分で選んでいいとなると、そしてその選択に他人の命運が含まれているとなると、選ぶことが出来ない人なのだろうと思う。
 それを悪いこととは言えない。
 それを優しさと呼ぶ人も居るだろうから。

 自分よりも判断が優れていると思う人に意向を窺う彼女の、その生き方はどのように変わってゆくのだろう。

 そう思いながら、私は頷いた。いつもの笑顔で。彼女がクスムリア様の選んだ色に満足し、歩いてゆく後ろ姿を何を想うでもなく、見詰めていた。





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最終更新日  2015.09.08 02:46:14
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