Laub🍃

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2011.09.16
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カテゴリ: .1次メモ
 人の和の中心に居る人物は、二つのタイプに分けられると思う。
 一つは、周囲に人が居らずとも自立できるタイプ。
 もう一つはーーお分かりかと思うがーー周囲の人に、依存するタイプ。

 私もその一人だし、人を喜ばせることが好きな者は漏れなく後者の素養を持っている。

 前者の素養を、まあつまり一人でも楽しくやっていける部分を持つ私でさえ職務上、そう動くことは難しいのだ。民の安全を守る為に、がまず第一、これの次に民を喜ばせる、民と良い仲を築くことにあるから。
 安全を守る為に民を退けることは容認されても、民にエゴで何かを与える為に、ましてや自分の欲求をむき出しにして民を圧迫することなど言語道断。私の首は落ちるが、それ以上に民から向けられる目が冷たくなっていくことが痛い。

 ……そう、何故こんな前置きをしたかと言うと。

 職務上ではなく、趣味と実利を兼ねそのような役回り―他者を救済する事、を買って出ているブラヴインの最近の状態が、妙に気にかかるからだ。



 彼女が自分に信頼の目を向けることを、自分を救済対象だと認識し自ら声を掛けてくることを、報酬として受け取っていた。


 ……とまあ、ここまでは私の勝手で下衆な憶測ではあるが、先日の彼女の「フォムに手を差し伸べてあげられるのは…」という発言からして、ほぼ間違いないだろう。


 問題は、ここからだ。

 私は個人的に、ブラヴインの行動を評価している。フォムは救いの手を必要としていて、――特に私が関与できない時は―ブラヴインの救いの手を握られたいという欲求は渡りに船、利得の一致。

 しかし、この構図ではいささかブラヴインが優位に見える。
 ブラヴインは差し出す側、フォムはそれを待ち望む側なのだから。

 しかし、ここで一転フォムがそれを必要としなくなったら?

 ……ブラヴインは、フォムと今ほど関わる、よりも前の生活に戻るだろう――
 スピーネ、リシットと三人で居るという選択を。
 しかし、リシットは最近私が持ち出したものにより、少しずつ自立の楽しさを、自分がやったと胸を張ることにより得る誇りを、よく知った。

 リシットは一見真面目、あるいは内気な人間に見えるがその実彼女の本質は私にも読み切れない程、何かを孕んでいる。……そうして、リシットの意見を抑えがちだったスピーネは、ブラヴインに補佐されながらも、優秀な成績をそこかしこで残しながらも、人心掌握には一歩及ばないー率いるには向いているにしても、場を和ませることには気を配る余裕がないー彼女は、今場を離れている。恐らく家族の世話をする為だろう。


「私が居ない間に何か楽しそうな事をやっている」という目が忘れられない。

 私はブラヴインの理知とリシットの内情を、スピーネの無自覚の傲慢から抜け出させたつもりだったが、これは失敗だったのかもしれない。失敗とは言えないにしてもー早すぎる手だったのかも。

 私が崩したこの均衡。
 ……食物連鎖のような関係の、破壊。

 それによって、ブラヴインからはスピーネ、リシット間の調整やリシットへの牽引、またフォムへの救済。

 リシットからは誰かが圧力をかけているという自覚、圧力を掛けられている者として考えること――

 を、それぞれ奪ってはいないか。

 私が見ているのは夕方の街に居る彼女たちだけだから、家に、また昼の彼女達のことは、直接知ることは出来ないし、まして関わることなど出来るわけがない。

 だが、……今日、目にしたブラヴインの目は確実に、私への諦めの片鱗が見えた気がするのだ。
 私が崩すだけ崩しておいて、火種を残しておいて、そのまま立ち去るのだろうというような、また私があらゆる面で頼りにならないーということが。





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最終更新日  2015.09.15 02:23:32
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