Laub🍃

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2011.11.02
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カテゴリ: 💫復活裏
 俺は雨の守護者に任じられたらしい。
 けど、俺は青空が好きだ。
 もっと言うなら、ツナ、あいつの居る青空が好きだ。
 空を飛ぶってそりゃ戦隊ものかよツナ、いくらマフィアでも空を飛びかうのは銃弾くらいだろと思ってたもんだけど、あいつが飛ぶために邪魔なもんは全部叩き落として、俺のツバメだけでも一緒に飛んでいけたらと思うくらいには俺はあいつという大空を崇拝してる。ちょっとこんなこと言うのは気恥ずかしいけどな。

 だけど、俺は分かってなかった。

 俺の大好きな青空はきっと、屋上ダイブした俺みたいな、それを後先考えず助けようとしたツナみたいな、青臭い子供だけの世界だってことを。




「……山本……」
「…ツナァ、ずぶぬれじゃん!いやー、外降ってたもんなー!!
 これタオルなのなー!」


 その夜、ツナが俺の家に来た理由を俺は聞かなかった。

 まず泣いている、と思った。
 次に親父が魚を捌いてるときの臭いをもっと酷くしたみたいな臭いがかすかにした。

 だけどそれを言ったら何もかもが駄目になってしまう気がした。

 秋の雨は寒いだろ、なんて言いながらぐちゃぐちゃになったツナを抱えて風呂場へ直行。そのまま馬鹿みたいに明るい歌を歌いながら、一緒に風呂。互いの傷も何もかも見えないふりして、上がったら布団へダイブ。中学生の、数年前の俺達みたいに。
 そのまま手当をしながら、修学旅行の夜みたいに盛り上がった。アホみたいなノリで、ツナの心の傷からツナが少しでも目を逸らせたらいいと思った。できたら、癒せれば、とも。

 俺は自分が雨で良かったと思った。わずかに残った赤も鉄臭さも全てツナのものと思うことにして、全てをお互い見ない事にできる雨でよかったと思った。

 俺の所でだけ、相手にも、ツナ自身にもツナが嘘を吐けるといいと思った。



 いつかは青空の下、ツナのものじゃない赤に塗れるツナを見る日が来るのだろう。
 けれどその頃には俺もツナも大分麻痺してるか狂ってしまっていると思うから、それまではツナの震える手を、握っていたいと思うのだ。





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最終更新日  2016.11.07 04:20:44
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