Laub🍃

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2011.11.09
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カテゴリ: .1次メモ
ある所に白藍様という人がおりました。
 彼女は村の巫女として狭い世界で暮らしてきました。
 彼女はなにかを嫌うこともありませんでしたが特別に好きと思う相手もおりませんでした。
 彼女を慕っていたある青年は、そんな彼女を愛し、敬い、支えました。
 彼女が殺せない彼女にあだなす存在をこっそり始末して自分が死に掛けたこともありました、それがばれて彼女が珍しくとても困った顔で泣いたのを見たこともありました。
 そうして彼女にとっても、青年はある種で特別な相手になっていきました。
 あるとき、彼とかかわりを絶てと村の皆に言われました。
 青年は彼女のために尽くそうとしましたが、やりすぎたのです。
 博愛様は悩みました。

 それは彼を連れて逃げることでした。
 それはけして彼を好きなわけではなく、そうすることで答えを出すことから、
選択をすることから逃げたのです。
 逃げた先、青年は誰にも優しい白藍様が自分の手をとってくれたことを喜びながら、野宿で火を見守りながら、こくりこくりと眠ってしまいました。

 次に目が覚めたのは、血なまぐさい臭いが漂ってきたからです。

 知っている臭いでした。

 もしかして追っ手がやってきたのだろうか。それとも獣が何か獲物を食べているのか。
 いやな予感がしながら白藍様は無事かと、毛布と簡単な小屋を覗くと、そこには白藍様は居ませんでした。

 彼はもはやなきそうになりながら駆け出していました。

 臭いはどんどん強くなります。
 たどり着いたそこには狼がたくさん居ました。



 白藍様はもはや事切れていました。

 青年はその場で、血に塗れた刃を己に突き立てました。

 白藍様の唇は、「誰かを選ばずに済んだこと」を喜ぶかのように、微笑んでいました。





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最終更新日  2016.09.27 17:06:19
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