Laub🍃

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2011.12.14
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カテゴリ: .1次メモ
 回復術を生業とする彼女は、常人―下手をすると並みの戦士よりもグロテスクな負傷や死体を目にすることが多かった。故に気弱な彼女は常に精神を摩耗させ、遂には完全に感覚をシャットダウンし作業然として仕事をするようにもなっていた。彼女の属性が闇だったことも功を奏していた。しかしどんな惨状でもこの時ほどではなかっただろうと彼女は思った。

「こ…この人たちを、ですか……?」
「ああ」
「……見るからに、死んでいますが」
「そうだ。死体を改造して生き返らせ、兵士として利用する。この賢者の石が、頭と心臓の代わりになるからな」
「それにしたって」
「つべこべ言わずにやれ」
「は、はいっ」

 一人目は左目と右腕がなくぼろぼろだった二人目は頭がどれだけ探しても見付からず別人のもので代用した三人目は滅多刺しにされ四人目は蟲に喰われてどこが傷だったのかも分からなくなっていた五人目はー。


「要らない。魔力を温存しろ」
「……はい」

 彼らは文字通り、この戦場を死守したつわものどもだ。
「死ぬまで守り続けた国に、今再び役に立てるのだ。これほど光栄なことはなかろう?」
「……」

 眼鏡の奥、自身に言い聞かせるようにつぶやく彼の爛々とした目から少女はそっと目を逸らした。

 ちょっとした不満さえあれば反乱できると知ったのはその後のこと。
 モンスターを引き連れ王国に喧嘩を売る。かつての兵士たちを永遠に眠らせてあげるために。

 フリー素材と化した傭兵は元々の持ち主の手をもう離れ王国の手駒となり、彼らの故郷さえも襲いはじめた。
 仲良しな鍛冶屋の兄弟、斧使いと槌使いの二人は彼女も見た覚えがあるものだった。
 蘇らせたくなかったのに、あんな姿見たくなかったのに、それでも彼女は反乱にはあまりに無力だった。だからてっとり早くオークの村など人間達に不満を持つ奴等に懐柔をした。王国に不満を持つ盗賊たちは喜んで協力をしてくれた。



もはや意思のない者しか扱えない王国は、軍が既に機能していないー死んでいることに未だに気付いていない。

「さあ、引導を渡しに行きましょう」
「ア゛ー」

 返す声は一般に下品と呼ばれる声ばかり。
 王国から弾かれた者たちばかり。


「沢山の正義は、一つの正義よりも強いってことを、知って頂きましょう」

 真実はいつも一つ。
 正義はいつも沢山。

 私軍の闘いはこれからです。





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最終更新日  2016.11.24 04:37:54
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