Laub🍃

Laub🍃

2012.02.26
XML
カテゴリ: .1次メモ
「僕に譲って」という言葉は弟の口癖だった。

私は姉だからいつもいつもいつも譲ってきた。

甘ったれの弟が可愛くなかった訳じゃない。
けど、私が譲る時はともかく、周りの人が弟に譲っている所を見るのは、癪だった。

それに、何より、弟のある所が私はとても嫌いだった―――。



さて話は変わるのだけれど、私は親友のみつこちゃんと言う子に誕生日のプレゼントをした。
みつこちゃんの好きな動物のぬいぐるみ。

私は譲ってと言われたことが多かったせいか、自主的に誰かに「何を渡すか」を考えたことはなかったことにそこでやっと気付いた。

みつこちゃんは人に譲ってとは殆ど言わない子だった。


だから、好きな動物のぬいぐるみをあげて、喜んでもらえるか分からなかったけれど、でもお母さんとお父さんに話したらそれはきっと喜んでもらえるよと言ってもらえたから、おこづかいをはたいたのだ。
お母さんは買ってあげようかと言ってくれたけど、でも私が買うからこそのものだと思った。

げんに、みつこちゃんはそのぬいぐるみをとても好きだと言ってくれた。
私はみつこちゃんに喜んでもらえた嬉しさと、いつもみつこちゃんに幸せにしてもらっていることに恩返しを出来た嬉しさでいっぱいになった。



そこまではよかった。



けど、それから数年して、みつこちゃんの家に勉強会をしに行く時、弟も夏休みの宿題をやりたいと言って着いて来た。
そこでやつがまた言ったのだ。
「その怪獣をゆずって」
と。

私はみつこちゃんは断ってくれると思っていた。
みつこちゃんは優しいけれど、それでもまさか、そんなことは、と。



けれど、その数日後。


弟の部屋の床に無造作に、ぼろっとした状態で転がっていたのは私の渡した緑色の怪獣で。



大嫌いだ、弟のことが大嫌いだ。

人から沢山の愛を貰ってるくせに、それを粗末に扱うあいつが。

そしてそんな奴に渡してしまうみつこちゃんが。




みつこちゃんの部屋にも行かなかった。
行って、確認してしまうことが怖かった。











だから、みつこちゃんに渡した怪獣は今でもみつこちゃんの部屋にあることを、
みつこちゃんが弟に渡したのは新しく買ったものであったことを、

私は知らなかった。





私はみつこちゃんの大事にする気持ちを粗末にしてしまった。

考え無しな弟と違って、勘違いで、故意に、拒んでしまった。


みつこちゃん、みつこちゃん、みつこちゃん。













「……のりえ。」
「え」

「ほら、これ。あのさ、ちょっと、その、あんま好みじゃなかったらごめん」
「え、え、ぬいぐるみ?あれ、この形ってもしかして」

「……うん。色違いがあってさ。可愛かったからつい……で、あのさ、この間のことなんだけど。のりひこくんからちょっと話聞いた。」
「!」

「のりえって結構早とちりだよねー。全く。…まあ、不安にさせてごめんね。」
「みつこちゃ」














まあ、夢なんですけど。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2015.02.22 01:57:59
コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: