Laub🍃

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2012.03.14
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カテゴリ: .1次題
前田路子はよく笑う。

後桐宏はその姿に惚れて告白した。






前田路子は後桐宏のプレゼントするもの、用意したサプライズ、全てに感動してくれた。
後桐宏の趣味丸出しな映画や野球の試合観戦、部活動にまで付き合ってくれた。

目の前にあるものを全力で楽しむのがスタンスなのと前田路子は言った。


だから前田路子を楽しませたくて後桐宏は頑張った。







後桐宏はある時気付いてしまった。


だが、彼女は同時に、誰かと未来を共にすることを全く考えていない。

目の前のことが全てでしょと彼女は言った。

それでもいいとはじめは彼も考えていた。
大体未来も過去も、今の瞬間の積み重ねなのだから、何の差異がある、と。

だが、同じものを見ているつもりで、例えば来年も一緒に居ようねと言ってもきょとんとされる。
一瞬だけだ。次の瞬間にはそうだねそれがいいねと彼女は笑う。
だが、彼が積み重ねているつもりのものが全て彼女にとっては未来と切り離されているものなのだ。

彼は彼女と別れることにした。

彼が居なくても彼女が笑えるという事実が耐えられなかった。







前田路子は一人になって、無表情で思う。





不確定で薄暗くて怖くて仕方ない未来なんてものと、幸せが確定している過去が結びつかなくてよかったと思う。


今を全力で楽しんで、それらの雲母のようにきらきらとした薄片を重ねて、幸せな記憶だけを覚えていればいい。

未来の有り得たかもしれないことなんて、考えるだけムダで、不毛で、哀しくなるだけ。



そうして今日も未来になんて期待しなかったから、前田路子は笑えている。







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最終更新日  2018.03.03 19:01:34
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