Laub🍃

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2012.07.17
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カテゴリ: .1次メモ
 きゃいきゃいと、家の裏から子供の笑い声が聞こえる。
 子供の少ないここいらでは一つしかその対象は思い浮かばない。

 …ハチと、レスと、あと一人。

 いつか同じように、この国の兵として働くのだろうけれど、今は特に関わりのない彼ら。
 別にかかわりを持つつもりもない。僕にはやらねばならないことがあるのだから。

 そうして今日も僕は、本の山に向き直った。




「隊長っ、俺、一人しか殺せなかったです…」
「かまいません。一人殺せれば十分です」




 しかしそれをよく分かっていない部下が、僕に対して何故か尊敬と感謝の念を抱いている。まあ「自分は役立たず」ということを把握してくれていることは確かなようなので、それは構わないのだが。


 そんな部下に今回は、少しだけ大きな仕事を任せてみた。最近不穏なー言ってしまえば軍を裏切りそうな同僚を、見張る仕事だ。

「た、隊長ー!」
「今度はどうしました。また年上女性に彼がホテルに連れて行かれそうになったという話ですか」
「いえ、違います!ハチコ様が……っ、「勇者」についていきました!!!」
「っ!!と、……止めろ……いや、僕が行きます」
「お、おれもついていきま…」
「…………分かった」

 彼にそんなことを期待するだけ無駄だ。ああ本当にどうして僕ばかりこんなことを。
 まあ素直に反応してくれているだけ、ハチコの部下よりはましなのだろうが。

 本当は、医者になりたかったのだ。同じ軍で働くとしても医師になれれば、人を救い、また自身の命もある程度は保障される。

 あの落ちこぼれ共と同じ。

 軍人の人手不足も原因だという。……ならば、人手不足を補うだけのことをすればいいのではないか。
 そうして出来上がったのが僕たちの薬殺機関だ。毒ガスだけでなく、ときたま魅了洗脳、能力強化の仕事まで任されている。

 だから今回持っていくのは、僕たちの実験最終段階に入ったー洗脳薬。

 いいところまで彼が勇者たちの中で地位を築き上げた時に効果を発現、最大の傷を与えるように、裏切ってくれる。


 勉強してきた甲斐があったというものだ。





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最終更新日  2016.06.01 16:26:14
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