Laub🍃

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2012.07.25
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カテゴリ: .1次メモ
「あなたはいりません」
「けれど、『平和』なこの国では死刑もできない」
「『貧困』なこの国では、穀潰しをおいておく余裕もない」


 ということで、俺は島流しにされた。

 民衆は特にいうことなどないらしく、俺がぼうっとしている間にすべてはつつがなく進んでいった。
 石を投げられることなく、けれど意志疎通も何もなく。ずっと無言で、新しい政権のやつらが声を上げ反応を促したときだけ反応するあいつらを、どことなく薄気味悪く思った。




 島流しにされた先はどこへ続くともしれない潮流。
最後の情けとでもいうように積まれた食料を齧るごとに情けなさが募る。矜持をごみのように捨てながら貪る俺は、人間ではなかっただろう。

 けれど。



「……なあ、俺もその仕事、やってみて、いいか」

 俺はそこの指導者の近くで、知っている手法を教え、逆に島人のやり方を教わり、できるだけ肉体労働をしていくうちに、彼らに「ありがとう」と笑まれた時に。


「……いや、これくらい……あ」
「え?」


じわりと、涙が出た。


そうか、俺は。


 慌てて「資材をとってくる」と誤魔化し、背を向けながら、思う。


きっと、どんな立場でもいいから、必要とされて、誰かを助けて、そうして……笑顔を見たかったんだ。



「……島流しに、感謝すべきかな」
「ん?どうした?」

ぼそりと呟くと、一緒に作業場に足を進めていたおっさんが反応する。


「そうか!そりゃーいい、ここに来てからお前さんずっと笑ってるもんな!!顔怖いのに!」
「顔怖いは余計だ」

 がはがは笑いながらばんばん背中をたたいてくるおっさんに、また、元の国では見せかけのものしかできなかった、ここでは自然ともれてしまう笑みを浮かべた。






*******

<ある××者の独白>






 さりとて興味はないと思いながらも、島人たちの噂話に上がればどうしても聞き耳を立ててしまうのは性か。

 俺はやはり、いらなかったということなんだろう。

 別にかまわない。俺は、誰かの役にさえ立てれば、その誰かが快を感じてくれればいいのだから。
 俺という力を、誰かにとっては捨てても構わない力を、誰かが拾ってくれるなら。

 『主』に今更憧れはしない。俺の力が主として向いているならそうするし、支える者に向いているならそうしよう。無為だけが、無駄な存在と断定されることだけが、俺にとって耐えがたい。

 こうして切り離された経験も、いつか、有為にしてやろう。
 あの時の俺の絶望もすべて、すべてすべて俺は生かしてやる。

 対象は『俺』に限らない。俺しか導けない全てを、俺は主として導こう。


 いつかの未来の、誰かの何かの為に……


「おーいユクエ、ちょっと手伝ってくれー」
「ああ、今行く」


今の、誰かの為に。




******


「毒才者失格」の続き。
元王・ユクエは尽くしたがりかつ認められれば必要とされれば誰でもいい感じです



メン…ヘラ…?

なんだろうこの属性何





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最終更新日  2015.06.20 20:53:05
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