Laub🍃

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2012.11.16
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カテゴリ: .1次メモ
 僕は、モンスターを預かり、一時的に育てる仕事をしている。
 学業と両立するため、この仕事をするのは長い休みだけだ。

 長い休みに久方ぶりに入り、この仕事を再開したのだが、どうやら半数のモンスターは僕を忘れてしまっていたようだ。
 仕方が無いのでいちから仕切りなおすつもりで、先輩方の仕事ぶりを見ながら面倒を見て、そのやり方を真似てみたところ案外好評で。自分ではこんなやり方も悪くないと思っていた、のだが。

「にゃー」
「しゃあ」
「おはよう、みんな」
「みゃはおー」

 新しく接する、先輩に懐いているモンスターは僕を好いてくれた。が、


「トト・・・」

 呼ぶのは、僕の名前じゃない。先輩の名前だ。

 僕は、先輩の模倣をすることで成り上がったが、存在としては。

 生身の「僕」でなく、「先輩の劣化版」に成り下がってしまった。


 それでも、よかった。よいと、思っていた。思っていたかった。
 けれど。

「よ、ミーナ!今日も妙なことやってるなぁ」
「・・・・・・シャー!」
「・・・・・・!」

 僕を覚えていた、一部の子・・・・・・とりわけミーナは僕に警戒心を抱いているようで。


「・・・・・・ごめんね」







「・・・・・・ティナ、さいきん、へん。おこってる?」
「・・・・・・・・・・・・・え?」
「ことば、あらい、むりもしてる」
「・・・・・・・・・・・・へんじゃない、ティナってどんなん?」

「・・・・・・」


 僕は、そこでやっと、ここ数日楽をするために何を犠牲にしていたか気付いた。
 自分が大事な自分自身を捨てていることに、やっと気付いた。
 そして、それをしなくていいといってくれる存在がいることにも、やっと、気付けた。

「・・・・・・楽しいからね。みんなと会えて。だから、こうなってるんだ。じきに、もどるよ」


 好かれたくてかけていた魔法は、もうおしまいだ。
 先輩方を過剰に見て、特徴をつかんで、マネをする努力も、減らしていこう。

 ここからは、

「・・・さては、きしゃま、ティナのにせものだなっ!?」
「いたた、ちがうって。かまないかまない、大丈夫、大丈夫」


 少しずつ「自分」を見つけていこう。





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最終更新日  2016.03.06 23:01:26
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