Laub🍃

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2015.05.09
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カテゴリ: .1次題
手を彼はこすり合わせる。

ある教団の最高幹部である彼は、神に祈り信者たちの命運を良きものにしてもらっている。

手をこすり合わせれば、それだけで供物の恨みも消え去る。

だから何を犠牲にしても彼は許されるのだ。




手を彼はこすり合わせる。

彼には一人息子が居た。

息子は彼に反発して、外で好き勝手金をばらまき教団の品位を下げている。

もう外に行ってくれるなと頼んでも、息子は死んだ魚のような目を変えない。

その目がお前のせいだよと語っているようで、彼はとうとうこすり合わせていた手で息子を殴った。













教団幹部の息子である彼は、寒空の中歩き、一人夢を見る。

神様に振り回されない世界、考え方の違う神様が何柱も居る世界を夢見る。

父親におとなしく従って、父親の言う通り色々なものを犠牲にして、静かに怨むあの目たちから何度も目を逸らしてきた過去の夢も見る。

けれど、あの過去も、素敵な未来も最早彼の手の中にはない。

彼が持っているのは荒れた手と、

「…初雪か」

誰にも降ってくる冷たい時間だけだった。


斜め前の空では月がかすかに雲から顔を出している。
その綺麗な世界とちっぽけな彼の間を雪がどんどん埋めていく。


父親に反抗する前、父親以外の全てを犠牲にしていた彼が戻れる場所は、結局父親の所しかなかった。





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最終更新日  2018.01.17 07:04:57
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