Laub🍃

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2015.07.21
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カテゴリ: 🌾7種2次裏
記憶喪失IFな安居
涼視点



*******

安居が消えた。

俺が殺そうとした奴を助けようとなんてするから、冷たい流水の中、どこかに消えてしまった。



俺達はひたすら安居を捜し続けた。

海流の流れを捜して、海岸を歩いて、高い山に登って、空を飛んで、犬を放って、各々の出来ることをした。


あゆ、鷭、源五郎は村に残った。……秋のチームはもとより動くつもりもなかったようだから仕方がない。夏のAチームの誰かは、残って村と一般人を管理していなければならないから、それについての異論はない。

その分花と新巻とハルに動いてもらうと言ったら、ひどく嫌そうな顔をされたが、まあどうでもいいことだ。




こんな風に矢面に立って動き続けることは俺の役割じゃない。
目指す先や選ぶ手段。王道をあいつが選んで、俺はその盲点を突く邪道を選ぶ役割だっていうのに、これじゃ何にもならないだろうが。


早く帰って来い、安居。








あれから数か月。

安居が見付かった。


……13歳以降の記憶を失って。







夏のBチームとかいう、ひどく警戒心の欠けた奴らの中で、あいつは嬉しそうに駄目な奴らの面倒を見ている。
馬鹿みたいに幸せで、どうしようもなく哀れな姿だ。

これこそがきっと、要さんの本当に望んでいた姿だったんだろう。



分からない。




あの平穏はかつてあったものだ。
だが、それを持つのが髪を白くしたあいつである限り、その姿は紛い物だ。


その清廉さは俺が求めていたものだった。


そこに居るのはかつての残酷なまでに潔癖なあいつだ。

残酷なまでに、未来の世界で、俺の相棒を傷付け続けたあいつだ。



032.o




俺はあいつを傷付けるものを消したかった。

他のチームの命知らずな奴だろうと、先生の娘だろうと、あいつを苦しめる記憶だろうと。


今、もし、あいつの記憶が蘇らないなら、親友に命を懸けられてここにやってきたあいつは、もう居ない。
周囲も自分も傷付け続けるあいつはもう居ない。

あいつは自分を傷付ける必要がない。
責めるべきあいつがもう居ないから。



それは今のあいつにとって幸せなのかもしれない。









安居の行く先が未来だ。

安居の向かう先に光がある。

だから俺は影のようについていった。

今、俺の役割は何だ。

俺が今あいつにできることは何だ。


あいつの憎むあいつを呼び戻すことか。

あいつを憎むあいつの世界を守ることか。


俺には分からない。





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最終更新日  2018.03.13 03:30:14
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