Laub🍃

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2017.09.07
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カテゴリ: 🌾7種2次裏
涼視点14巻/病んでる






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支迷 

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「2時間経ったら交代しよう」
「了解」

昼間の安居が眠ると、気温が少し下がるような気がする。
煮え滾るような憎悪と苛立ちを、この所連日安居は抱えている。

身内だけで暮らしていればこうはならなかったろうに、下手に保護なんてしようとするから。



今日も俺には何も出来ない。





考えるな、安居。

あいつらのことなんて考えるな。

邪魔な奴はもう消えるから。

俺が消してやるから。

お前にあいつらのことを考えさせるだけであいつは悪だ。




「……行かなくちゃ」

憂鬱になるのは、深夜、この状態になった安居と見張り交代をすることだ。

考えるな、安居。



分かっている。答えは一つしかない。

「茂が居ないから、探しに行く」

「……もう、交代の時間だ。寝ろ」

あいつらのことを、追いかけるな。

俺達もここに居る。


「……でも……まだ……」
「そんな隈の濃い状態じゃ、何をするにも非効率だ。だろ?」

一度眠れば安居は、『リーダー』に戻る。表面上ではあるが。

「……」

俺を説くうまい言い方を探している内に頭の中が混乱しはじめたらしい安居はじきに眉を顰めはじめた。
そして酷く小さな声で呟いた。

「……分かった」
「一人で戻れるか」
「ああ」

危なっかしいその背中を見送る。
ツリーハウスの入口に消えていく背中は、手負いの獣のようだった。

安居が捜し疲れて、あるいは俺達に諭されて眠るのは何回目になるだろうか。

安居が彼岸に希望を抱かないように、けれど安居が此岸に絶望を抱かないようにするにはどうすればいいのか。
分からない。

俺には安居を癒せない。

だがあの時ロープを切ったのは俺だ。

茂を切り捨て、安居を引き上げたのは俺だ。

俺が、安居を此岸に縫い留めないといけない。

俺が、しっかりしないといけない。

俺が、安居の歩みを守らないといけない。

安居の目から憎悪や後悔を切り離して、また未来に向かって邁進できるようにしてやらないといけない。

『だから言ったんだよ』

そうだ、何度も教わった筈だ。

『見掛け倒しだな、涼』

あの時は失敗した。
だから今度は失敗しない。
俺には出来る。

いつものように、周囲の状況を把握して計画を立てて障害物を減らせばいい。
あいつらのように、傷と恨みと嫌悪を全ての免罪符にして、煩いもの汚いものを消せばいい。

「分かってる」


そして今度こそ、何もない綺麗な未来を掴み取ればいい。

あいつの為に。





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最終更新日  2018.03.18 03:16:58
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