Laub🍃

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2017.09.21
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カテゴリ: 🌾7種2次表
安居視点一人称。
安居+要。




*******


 要さんを要さんと呼ぶようになってから数年が過ぎた。

 未だに要さんは現れない。痕跡も残さずに居る。だけどきっと要さんは生きている。


 初めの内は、理不尽に潰される事への怒りがあった。
 次に理解してもらえなかった寂しさがやってきて、あの人にもう何も教えてもらえないことへの怖れを抱いて、そして……要さんを最後まで理解できなかった悲しさがこみ上げてきた。

 断ち切れない。

 茂との想い出には俺があの日見捨てた記憶が混ざっていて、だけど茂はそれさえ赦して俺を未来に送ってくれた。


 けれど要さんは俺達を見捨てる側で、そして、俺達はきっと、赦す側だ。
 赦せない。
 忘れられない。

 忘れた方がきっと癒されるんだろう。

 謝って欲しいとも思えないんだから、再会した時何を話せばいいのかも分からないんだから、忘れた方がいい。

 だけど忘れられない。

 日々こなす新しい課題や、海外で出会って、そこで別れたり、一緒に日本に来た人々や、日本のどう接すればいいか分からない皆のことを考える度に、要先輩の話が頭を過る。
 要先輩ならどうしていただろうと考える。

 あの人は失敗したのに。

 ……いや、駄目だ、これも要さんの考え方だ。


 大元が何であるにしろ、成果が出ていれば救われる。




 俺達の身に沁みついた夏Aとしての経験と使命が教えることは、どこまで守るべきなのか。


 気が付いたら俺は、合理的に物事を進めて誰かの大事にしているものを踏み躙って、それでもそれが一番正解だと笑う存在になってるんじゃないか。


 あの日、洞窟の中や、赤い部屋を出て見た要先輩のように、理解しがたくて、どう話しかければいいかも分からない存在になっていたらどうすればいいのか分からない。

 そうならないように誰かに教えてほしいのに、その誰かが分からない。





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最終更新日  2018.03.11 23:14:22
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